SOUL-STIRRING ANNA TSUCHIYA

FASHION

魂を揺さぶるような、好きなものに出会うこと。それは人を常に輝かしき新境地へと、後押ししてくれる。ミュージックアーティスト、女優、そしてモデルとマルチな才能を爆発、ハートから艶やかでハンサムな土屋アンナさんの、ロックなエネルギーをここに。

jacket¥177,100 pants¥206,800 both by DIESEL / DIESEL JAPAN bustier¥61,600 by WILDFRÄULEIN necklace ¥209,000 by JUSTIN DAVIS / JACK of ALL TRADES PRESS ROOM others stylist’s own

ご撮影はいかがでしたでしょうか?

雑誌にずっと慣れ親しんできた世代でもありますし、ファッション撮影は久しぶりだったのですごく楽しかったです。写真一枚一枚、雑誌一冊に込める想いや物語がそこにあるというか。読者がふと手を止めるような1ページを、素晴らしいスタッフとともに、その空気感でビビビッと言葉でもなく感覚で作り出す、それが昔から好きなんです。用意された衣装、メイクによって普段とはまた違う自分がいて、それを写真に撮ってもらう。そこで作り出される人間性に自分も向き合うのがやっぱり楽しいので。今日の撮影も、一番はスタッフみんなが素晴らしいということ、そしてどの衣装も素敵で、時間が過ぎるのがあっという間に感じられました。

特に印象に残っている衣装はございますか?

HAENGNAEの赤いドレスは、ラインもすごく綺麗で印象的でした。ボディコンシャスなデザインが好きで、普段のロック、ゴシックスタイルでもラインを意識することが多くて。すべてバランスですよね。全部がゴテゴテしているよりも、足し引きが計算された洋服が好き。特にロックやゴシック、パンクはそれが絶妙に難しいのですが、ある程度ラインが見えるとしっくりくるし、すごくグランジなテイストでも品がどこかしらに垣間見えたらいいなと。ブランドでいうと、Alexander McQueenなどは一見自由に見えながら、きちんと縛りがあって好きです。音楽シーンではファッションを楽しみつつも、子育てをしていると着るものは限られてきてしまうんですけどね。

“土屋アンナ”さんというとやっぱりロックなイメージがありますし、お似合いだなって感じます。対極にあるような、花柄のワンピースなども着る機会はありますか?

ないですよ!(笑) もちろんお仕事ではありますが、プライベートでは全然ないです。普段は本当に、ジーンズに白いTシャツというぐらいシンプルです。好きなアイテムを大切にしながら、一生着続けるということも自分の中で大事にしていて。飾る時は飾るんだけれども、飾られないようにする。

JUSTIN DAVISのジュエリーもお好きとお伺いしました。

好き! JUSTINはいろいろなカラーがあると思うのですが、ブレない何かをずっと追求している部分もあって。今回衣装で着けたクロスモチーフなどのジュエリーは、新しいクリエイティブディレクターが就任した後のデザインで、また違うパワーを感じられるんですよね。JUSTIN DAVISは一つのジェエリーが強いチャームになる。メッセージ性のあるものを作りたいという熱が感じられて、そこの感覚は私自身にも通ずる部分があるので、身に着けたくなるのかなと思います。

土屋さんが描く理想的な女性像があれば教えてください。

かっこいいなと目が行くのは、アンジェリーナ・ジョリー。憧れというよりは素敵だなと思う人。どんな立場、どんな場所であっても自分の考えが揺るがない人は見ていてスッキリとしますし、実際のところは分かり得ないですけど、アンジェリーナ・ジョリーも飾ってないように見えるので。あと、アーティストだとシンディ・ローパーかな。先日開催されたライブにも行ったのですが、やっぱり大好き。考え方がきちんとしているんですよね。音楽で世の中を変えたいとか、人間たるものこういることが世界平和だよねとか、そういうことを真剣に考えている人だから、ライブ中のMCでも嘘がないんです。上手に歌うアーティストはいっぱいいると思うのですが、加えて彼女は何かを伝えるエネルギーを持っている人だなと。それは、雑誌も同じなのかなって。ファッションは、人間にしかできないアートだと思うんです。自然もアートは作れるし、例えば波の音など音楽も作れる。でも人間は自分たちの手で新しいものを作る才能があるので、それをアートやクリエイティブでいい形に昇華していけたら、“peace”に繋がるのかなって。その才能を上手く使える人はやっぱり魅力的だなと感じます。

10代でモデル業をスタート、その後に歌手デ ビューを果たしていますが、お仕事を始めたばかりの当時の心境はいかがでしたか? 芸能界には元々興味はございましたか?

幼い頃から音楽は好きでしたが、当時はスポーツに傾倒していたので、芸能界には全然興味がなくて。ただ、姉がモデルをやっていたので、いいなとは感じていたんだと思います。モデルになりたいというよりは、女の子なら誰しもが憧れるような煌びやかな世界に惹かれていたというか、綺麗なお洋服を着て、写真を撮られるっていいなぐらいの気持ちでした。ただ、自分を綺麗に見せてくれる、周りの才能ある方々がとにかく魅力的だったんです。学校で一緒に勉強や部活動をするのは同い年の子どもたちばかりだけれど、撮影の現場に来るとかっこいいアーティストばかり。「服をこんな風に破っちゃうの!?」と驚かせてくれるスタイリストさんがいれば、「何もない真っ白な壁で、こんな風に写せるの!?」と感動させてくれるフォトグラファーさんがいて。こういう人たちのようになりたいな、ここは居心地がいいなと思っていたんです。時代的にも痩せないといけなかったりともちろん苦労もあって、メンタル部分においては色々な経験をしてきたけど、結果それが強みになるし、苦労をしたからこそ同じ経験、苦労をしている人に共感できるのかなと思っています。

人生が動いたと感じる転機はございますか?

もう転機だらけですよ。だけど、あんまりそれを転機と考えてはいなくて。女性だったら出産などのライフイベントもありますが、言えばすべて転機なので。意識したことはないし、なんなら人生は苦労のほうが多くて、全部が長い階段のよう。常に登り続けていて、常にハプニングがあって。いつか時が過ぎて、あの時これがあったから面白かったのかと振り返るぐらいで、あまり深くは考えていないかな。

モデル、歌手、女優業と様々な分野でご活躍されていますが、それぞれに対する姿勢は異なりますか?

昔はすごく異なっていましたね。音楽のほうが全然楽しいと感じていたし、演技は習ったこともなかったので女優業はすごく大変だったけど、お仕事のお話をいただけるだけでありがたいので、一生懸命やらないといけないし、自分が出せるものはすべて出し切ろうと。出し切り方は人それぞれ違うと思いますが、私はその時その瞬間に自分が生きているエネルギーをぶつけられればいいかなって。音楽もそうで、ライブに100%で向かい合う。今もやっぱり音楽が 一番好きです。でも、好きなものこそ嫌いになったりもするんですよね。例えば風邪をひいてしまって「こんな時でも歌わなきゃいけないよね……」と思ったりもするけれど、お客さんは来場しているのでそれに応えたい。好きなものほどプレッシャーがかかってくるというか。でもそういう時は、今の自分の全力を出す。自分が後悔しないようにできればOK、と自分に言い聞かせて頑張っています。

昨年「BLVCKPHOENIX」を結成されましたが、きっかけがあったのでしょうか?

バンドは前々からやりたかったんです。ずっと自分が好きな音楽をやりたくて。今までの音楽も好きですが、どこか意志とは違ったし歌えるだけありがたいという気持ちがあったので、多くの方に聴いてもらうために少しスタイルを変えなくてはいけなかったり、与えられた音楽を歌ったり。でも人生一度きりだし、自分が理想とする、こだわりを尽くして作った音楽をやりたい。さらに言えばレーベルなども関係なしに、小さい箱でもっと人との距離感が近い場所で楽しみたいなと思ったんです。それで「BLVCKPHOENIX」を結成しました。どうしても土屋アンナという名前はついてきてしまうかもしれないけど、メンバーみんながリスペクトし合いながら協力してやっていく。ぶつかりながらもやっていくことに憧れがあったし、40歳を超えたからこそ、若い方たちにうちらが聴いてきた音楽はこれだよ、と共有できたらいいなと。デジタルを通してなんでもできる時代だけど、やっぱり生の音を届けたいから今回のバンドでは機械も全然入れていなくて。さっきもお伝えしたように、人の手を使うという部分で、そこにこだわってみてもいいのかなと。

音楽をはじめ、クリエティブ活動の源となっているものはございますか?

世界の現状です。日本はまだ平和なほうだけれど、ドキュメンタリーやニュースを目にすれば、世界に対しての疑問が湧き上がってくるし、音楽はそれを伝えるべきツールだと思っていて。音楽や歌詞を通して、こういう人たちがいるんだ、こういうことが起きているんだと知ることができる。怒り、悲しみ、苦しみ、もちろん喜びもあっていいんだけれど、それらをみんなとシェアすること、私たちが動くことで何かが変わるんじゃないかという気持ちがあります。戦争だったり貧困だったり、本当は大人たちが変えていかな くてはいけない課題なのに、誰も変えようとしない。でも、私たちは何もできないと投げやるのではなく、歌ってでもいい、踊ってでもいいから、みんながムーブメントの一端となって、一人にでも興味を持ってもらえるようなことをできたらなと。映画やドキュメンタリーを観て、もし自分がこうだったらと立場を置き換えて考えることも多いので、私の歌詞もそういう世界の実情に根差した内容ばかりです。親がいることも、食べ物があることも当たり前じゃない。でも世界をコントロールしているのは、結果人間だったりするので。クリエイティブをいい方向に持っていこう、とはまさにこのこと。だから嘘なき叫びしかしないし、偽善もない。私たちというエネルギーがあるのだから「なんか動こうぜ!」というインスピレーションで活動しています。

幼い頃から好きだったとおっしゃっていましたが、土屋さんにとって音楽とは?

このストレス社会では、多くの人が言いたいことを言えなかったり、よくも悪くも気を遣ってしまったりと、右へ倣えの習慣が染み付いているのかなって。でも、音楽は自由。別に何を歌ってもいいし、どう叫んでもいい。聞く側もそうで自由に聞いていいんです。いい意味でルールがないので、演奏する側もライブに来る方も、みんなが本当の自分でいられる場所。この瞬間は一度全部忘れて、今の自分だけを感じてもらい、無心で気持ちよくなってくれたらいいなと思 うんです。音楽は世界の言語の壁もなく、みんなが繋がれる一番のコミュニケーションですよね。

言語が分からなくても伝わるものがありますもんね。

そうですね、歌っている人の気持ちだけでも。どこの出身だとしても、どこに住んでいても、やっぱり苦しみ、悲しみ、喜びは一緒。音楽は言葉を超えて声に変えられる、唯一の武器だと思います。

育児や家事、お仕事はどう両立されていらっしゃるのでしょうか?

全然両立できていないです(笑)。でも、できないことを気にするのではなく、周りのみんなに「よろしく!」と言ってしまいます。なんでかというと、子どもたちはみんなで育てないといけないと思っていて。こちらも頼る気持ちで、自分一人ではできないという意思をはっきりと行動に出す。それで嫌な顔をされたら寂しい人だなと思うけど、実際みんな子どもたちのことを見てくれるので。小さな生命、弱い者たちを大人たちが守るべきで、それが人間の役割だと思うので、自分で抱え込んだり、鎧をつけたりしなくていいのかなって。

身も心もヘルシーでいるために、日頃から意識していることはございますか? また、美容面で気をつけていることはありますか?

私自身は決してヘルシーではないですけど(笑)、スタイルに関してはバレエをやっているので、維持できているのかも。がっつりバレエを始めてから、もう少しで10年ぐらい。モデルさんをはじめ色々な方を見てきましたが、バレリーナやバレエをやられている方の身体が一番綺麗なんです。でも、それはすごい努力をしているからこそ。踊っている姿を見ると軽やかで綺麗だなと思いますが、実際に踊っている人は神経を研ぎ澄ませながら、地獄のような経験をしてき ているわけで。自分もいざ踊ってみると「うわ、大変だ」と思いましたし、努力あってこそあの身体になるんだなと実感しました。その努力をしている最中も好きで、だからこそバレエを選んでいるので無理は全くしていないですし、今の身体がちょうど気持ちよく動いて生きられる状態。ただ、人それぞれヘルシーの定義は違うと思うので、誰かの真似をするのではなく、とはいえ健康でいられるように、自分にとっていいものを見極めながら、心地よく思えることを続けるのが大事なのかなと感じています。

バレエをやられていると食事制限も大変なのでしょうか?

逆に食べないとダメなので、どちらかというと今は食べています。最近は、お米もしっかり食べないと、と思い積極的に摂るようにしていて。それまでは野菜やチーズなどの、素材そのものの味わいが好きで、料理されているものが苦手だったのですが、そうすると偏りが出てしまうんですよね。歳も重ねていますし、いろんな情報を見極めながら食事をしています。 調味料などもなるべくシンプルに。ステーキなんて塩とワサビと食べるのが最高! そっちのほうが美味 しいし、舌も自然とそれに慣れてくるので。元々ジャンクな食べ物は好きではないのですが、生クリームは大好物なので特段制限はせず、やりすぎずにこだわるところはこだわる、食べたい時は食べるし食べ過ぎたなと思ったら抑えるし、とバランスを取りながら自分のストレスにならない範囲で食は楽しんでいます。

悩んだ時のリフレッシュ方法はありますか?

お酒を飲みながらの愚痴(笑)。でも、やっぱり食べることじゃないですか。誰しも空腹だと元気が出ないもので、食事で満たされることが多分イチ幸せだと思うんです。だから美味しいものを食べるということと、私の場合は運動がストレス発散になっています。集中することが好きで。この歳になると自分を褒める機会も少ないと思うのですが、一生懸命運動をした後って、口にはしないものの「やりきった!」と心の中で恐らく自分を褒めているはず。運動でなくても仕事でもいいし、塗り絵でも書道でもいいし、悩み事を一度忘れて集中する。そうしてやり切れることで、自分を褒められると思うので。そういった時間を自分で作ることで、自然とメンタル維持ができているのかもしれないです。

マインドフルネスの一環になりますもんね。

そうだと思います。歌でもいいんです、カラオケで精一杯歌う。何かに一生懸命になることって大事ですよね。大人になるとある程度できてしまうので、学生の時みたいに一生懸命になる機会がなかなか訪れない。家でひたすら掃除するでもいいと思うんです。集中できる、達成感が得られる何かを持っておくと元気でいられますよね!

新たに挑戦してみたいこともありますか?

今やっているバレエやバンドも続けていきたいし、 加えてダイビングのライセンスをもう一度取り直していて。すごく大変ですが、救助のライセンスを取ろうと頑張っています。出会った先生が、海に行って怪我するのは海に失礼だとおっしゃっていて。好きな海で、自分が人ひとりでも救えたらいいなと思うし、今生きてるうちに自分が習得したいと思う分野の勉強をしたくて。立ち泳ぎを30分したら、20分の休憩を挟んでまた立ち泳ぎを30分して、と練習もかなり ハードです。わざと視界の悪い海でも練習したり。でも親として子どもを守りたいし、自分の知識で救われる命があるなら。これは、学校では教えてくれなかったこと。そこに興味があるので、本気でやりたいなって。次会った時には、ムキムキになっているかもしれないです(笑)。

今日の撮影でも引き締まった筋肉に見惚れていました! 土屋さんはどんな時に一番の幸せを感じますか?

幸せって感じにくいものだとは思うのですが、やっぱりライブで盛り上がってくれるお客さんを、日本だけでなくいろいろな場所で見られて。そして自分の歌を歌ってくれた時は、幸せを感じます。あとは自分が作った料理に、子どもたちが美味しいと言ってくれた時。育てて守らなくてはいけないので何かと大変だし、幸せだなとゆっくり感じている時間もないくらいですけど、子どもたちが成長して行く中で、「ママおいしい!」「ママありがとう」と言ってくれたりすると、よかったなって思いますよね。もちろん一番いいのは、どこか旅行に行って美味しいものを食べたり、素敵なホテルに泊まれたりすることだけど(笑)。 そんな幸せはいつ来るんだろうかと思いながら、何事にも感謝しながら生きようと思っています。

最後に、どのように歳を重ねていきたいかなど今後の展望を教えてください。

たくさんのいい人たちと出会い、いい食事をともにして、一緒に仕事して、ライブもして。それが続いていくことが一番の贅沢だと思うので、一日一日が早く過ぎていくからこそ、今後も単純ではない日々を送りたいです。アップダウンでも全然ダウンでもいいから、濃い1日。一生懸命に力を出して「ああ疲れた!」と言いながら進んでいきたいです。全力を出すのも疲れはするけれど、力を抜くことはしない。だからいつか「力を抜く」ことを全力でやる日が来てもいいかもしれないですね。それまではとりあえず走り抜けなきゃ。それこそ人から求められている時が一番幸せだと思うので、今後も求められるアーティストになれるよう鍛え上げていきたいです。

PROFILE

ミュージシャン・モデル・女優 土屋アンナ ANNA TSUCHIYA

1984年3月11日生まれ。東京都出身。モデリングオフィスAMA所属。1998年にモデルとしてデビューし、雑誌やテレビ、CMなどで幅広く活躍。2004年には映画『下妻物語』に出演、第28回日本アカデミー賞新人賞/助演女優賞、第48回ブルーリボン賞最優秀新人賞などを受賞。2005年にミニアルバム『Taste My Beat』 で音楽活動を本格的に開始し、歌唱力の高さを武器に、多数アーティストとのコラボレーションやオリジナル楽曲の制作に携わったり、近年では世界各国のフェスへのゲスト参加や中国での楽曲リリースなど、ワールドワイドに活動。2024年には新ロックバンド 「BLVCKPHOENIX (ブラックフェニックス)」を結成し、生のリアルなロックを届けている。

Model:ANNA TSUCHIYA(MODELING OFFICE AMA) Photography:ALLAN ABANI Styling:KOSEI MATSUDA(NOBODCR) Stylist Assistant:KOKONA TATENO Hair&Makeup:Michou.(C-LOVe CREATORS) Edit&Text:SEIRA MAEHARA