GIVENCHY 2024年秋のプレタポルテ・コレクションに身を包み、GIANNA #12の表紙、巻頭ファッションページに登場したモデル 森星さんの限定インタビューを公開。
──本号では“FEEL FREE”というキーワードをテーマに据えているのですが、自由という言葉に対してどんな感覚を持ちますか?
自由な感性を持ち続けるのは難しいことだと思うし、潜在意識と顕在意識というのでしょうか、他人と自分とが考える自由の定義にもギャップがあったりするので、“本当の自由”はものすごく怖いことだなと。無限大に広がっているキャンバスよりも、額縁に囲われてある程度型が決められた中で自由を与えられた方が、イマジネーションが働く気がします。
──たしかに「ご自由にどうぞ」とゼロベースでまっさらな世界に放り込まれたら、どこから始めればいいか迷ってしまいますよね。
おっしゃる通りだと思います。ファッションモデルのお仕事も1人ではできないこと。スタッフの方々がいて、もちろん媒体や纏う衣服があって。そうした状況や条件によって定められた枠組み の内側で、いかに周りにリスペクトを置き、信頼関係を築いて挑めるか。そこで得られる自由、 安心感が大事ですよね。安心がないと、自分の行動に間違いがないか、緊張しながら読み解いていかないといけない。だからこそ、正直でいることはすごく大切だなと思います。いいと感じることも100人いたら100通りあるし、今回の撮影のように目指したい方向に向かって、皆で意思疎通しながら進められると、すごく楽しく撮影ができます。
──30代を迎え、ご自身の変化は感じますか?
まだ途中段階ではありますが、自分の”好き”をよりディファイン=くっきりとさせることができるようになりました。パーソナリティは変わらないので、久し振りに会う同級生に「全然変わらないね」と言ってもらえるとホッとするのですが、一方で自分の好きをディファインしていき、言語化できるようになっていることが自信に繋がっています。例えば絵画ひとつとっても、抽象的な絵が好きだなとか、いやもっと細かい線のものが好きかも、その中でも色の少ない鉛筆で描かれているものがいい、と好きをどんどんクリアにしていくことがディファイン。自分はどんな絵画が好きか分かると自分自身のことも分かってきて、さらに他者の考えも受け入れることができると思うんです。今はまた新たなスタート地点にいる気持ちで、次のレーンを走るか走らないか見定めているフェーズにいます。何が待ち受けているか分からないですが、それを恐れて走らず現状維持も良いけれど、今までお世話になった方たちに還元するためにも次を走りたい、という気持ちも強いです。頭だけで考えすぎずに走り出せば、自分の好きがディファインされ、余計なものがそぎ落とされていって、自分のスタイルや個性になっていくのかなって。生きていく中で苦しんだり悩んだり、そして喜んだりしながら自問自答してディファインする。そのプロセスが大事だと思うので、変わり続けていきたいです。
──人生の転機となったことは?
過去、ビッグイベントが起きてガラッと変わるといった転機の経験はなく、出会った方々から影響を受け、気づきを与えられながらグラデーションで変化している気がします。そしてなんとなく10年サイクルで転機を迎えている感覚があって。モデルを始めてから10年が経ち、色々なジャーニーがありましたが、今もまさに転機の真っ只中。自分では学生の時から変わっていないつもりでも、周りも自分もエイジングしていくわけで、見た目だけでなく中身の質も年相応に求められるようになる。もっと勉強しておけば、もっと色々な失敗を経験していたら、より味のある人になっていたかなと考える機会も増えて。今はその過渡期にある感じです。
──身も心もヘルシーでいるために意識していることはありますか?
心身の健康は、まさに私が日々学んでいることです! 十人十色の正解、フローやルーティーンがある中で、私も自分で探していかなきゃいけないなと。その一つとして「tefutefu」というブランドを展開していて、日本の文化や伝統に基づいた、日本ならではのウェルネステックのライフスタイルを提案しています。茶道や生け花、書道などクラシカルではありますが、そこに人間の感性を研ぎ澄ます原始的な要素が詰まっていると感じていて。日本列島の恵まれた自然環境で、先人たちが感性とともに生かしてきた様々なことを、現代のライフスタイルにフィットするよう再構築しています。例えば、コンテンポラリーな茶の湯の表現で漆器をデザインしたり。漆というボタニカルにハマった理由も、再生するという意味合いからです。漆器は金継ぎで修復することもできるし、塗ることで器が再生される。でも漆自体、素手で触ればかぶれるわけで、そのままでは人間にとって悪いものも、使い方次第で有用になる。知恵を働かせて、人間にとっていいものをいただきます、ということを伝承してきた文化背景は、いま生きる上でとても大切だと感じています。
──プライベート時間はどう過ごすことが多いですか?
今はモデル業の時間と、慣れない環境の中「tefutefu」で手探りしながら勉強している時間がほとんどで。その二軸の空いた時間に美容ケアや身体のメンテナンス、銀行に行くなどの家庭の雑務的なことをしたり(笑)、友達と出掛けたりしています。おうち時間では、インスピレーションになるような本や写真を手にしたり。アナログな紙媒体がすごく好きで。あとは香りを楽しんだり、真っ暗な中で蝋燭だけ灯したりと、そういう自分なりの風習を作ってリセットするようにしています。「tefutefu」では、香りや光を取り入れた五感でのリフレッシュも提案していて。さり気ないことではありますが、同じ行動をとるにしても香りを添えるだけで、気持ちや身体が変化するのかなって。
──グローバルに活躍されている森さんですが、海外と日本とでは気持ちも異なりますか?
コロナ禍が落ち着いてからは海外出張に行く回数も増え、以前よりも一瞬一瞬を味わうようになりました。たまに海外に行くと、つい引き下がったりシャイになったりと、日本人としての控えめな部分が出てしまうんです。日本の学校で育ったので、いくら英語が喋れると言っても他文化圏のユーモアやハイセンスな部分はまだまだ身についていなくて、ここまでだったらOKだよねというモラルやマナーは日本がベース。一方で、日本にいると母の血を引き継いだ海外的な側面が顔を出したりするので、そこのチューニングは難しく感じます。でも、どちらの自分も自分なので、超えてはいけない線は守りながら、上品でいたいです。西洋も国や文化圏によってスタイルが全然違いますが、全体的に皮肉が面白いとされていて、そこは特に日本にない感覚だなと。たしかに理解してみると面白いけど、自分が言われたら嫌だなと感じる時もあったり(笑)。そういったユーモアが何も言えないので、海外出張の後に疲れてしまうんです。母から学んだユーモアはオールドスクールで、もっと今っぽいハイセンスなユーモアをさらっと返したいのですが、そこはやっぱり根を下ろさないと難しいのかな。海外でパートナーを見つけるのが良いのかも(笑)。
──理想は海外の方ですか?
欲張りですが、東洋的なモラルや謙虚さと、西洋の独特な雰囲気を併せ持った方がいいです。ロマンチックというものを年齢とともに欲してきました(笑)。THE・ロマンチストを求めているというわけでなく、視野が広い方に魅力を感じるというか。国籍やルーツではなく、様々な環境を見てきた方は視野が広いと思うので、一緒に共感できるような人がいると嬉しいです。女性の選択肢が増えたことで、恋愛に迷われている方も正直いっぱいいると思っていて。芯の強い女性でもグラデーションがあるし、恋をする=たまに弱さを出すことも大事だなと感じます。だからこそ強さが生まれるわけだし、正直でいられるんじゃないかな。常に強くいなきゃ、完璧にできるようにしなきゃと肩肘はらなくていい。だからこそ、ずっとキュンキュンしていたいんです(笑)。よくハッピーの源は何ですかと聞かれたり、そこにフューチャーされたりすることが多いのですが、 私も強さと弱さの両方を持っていて。自分は強くいないと周りに愛されないのかなと悩む時だってあります。ハッピー野郎に見えるけど、私だって好きな人の腕の中で泣いたりしたい!(笑) そんな自分も愛してくれる人に出会いたいです。
──今後どういった”森星”さんになっていきたいですか?
今はちょうど試されている時期だと思っていて、自分自身を見つめ直して、本当に自分がワクワクすることを探っているタイミング。努力ではなくただ夢中になれること、嘘偽りのないパッションというのでしょうか。そうして自分が直感で選んだものは、後でつじつまが合うんです。「tefutefu」を始めたのも、日本の美意識、精神性は世界に自慢できる独特な文化であり、もっと発信したい!という直感で。根底にある大事な軸は守りつつ、世界に置いていかれないように、外にどんどん日本の良さを自慢して戦っていきたい。周りにただ憧れているだけでは逆に失礼だと思いますし、自国を知ることも他国に対するリスペクト。オリジナリティを築くために歴史を深掘りする、それが今の私が進む道ですが、“仕事”と捉えてしまうとパッションの下に動いているのか不明瞭になりがちで。パッションとその成果、クリエイティビティとビジネス。バランスが難しいですが、後々振り返ってみると、私が直感で感じたことには全てに理由があって、起こるべくして起こったんだなと。なので今後も自分がワクワクするもの、そして自分自身にも周りの人に対しても、正直でいることを大切にしていきたいです。
PROFILE モデル 森星
1992年4月22日生まれ。東京都出身。Crossover所属。モデルとして国内外で活躍し、途上国の女子を支援する公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーを務める。創業者の一人としてクリエイティブディレクターを務める「tefutefu」では、日本的ウェルビーイングを促進すべく、伝統や文化を尊重しつつ現代に馴染む形に再編集して世界に発信。2022年にはブルガリアウローラアワード及びフィガロジャポンBWAアワードをそれぞれ受賞。
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Edit&Text:SEIRA MAEHARA