BEACON OF HOPE KANICHIRO with GIORGIO ARMANI

FASHION

革新的なウエアを数々生み出し、目覚ましいサクセスストーリーを描いてきたGIORGIO ARMANI。その華麗なピースを纏うのは、演じることを宿命とする生来の才能、努力の成果で大いなる飛躍を見せる俳優・寛一郎さん。運命は自身で切り開いていくもの。そうすれば、自ずと道標を示す輝く存在に。

撮影はいかがでしたか?

役者をしていると、すごく華やかな衣装を着て撮影をすることがあまりないので、普段着ることのできない洋服に気分も上がりましたし、楽しかったです。

印象に残っているスタイリングはありますか?

キラキラしたジャケットはなかなか着る機会がないので、そういった服を纏う自分を見ることができて、とても新鮮に感じました。ライダースジャケットとシャツ、ネクタイのスタイリングも印象深いです。というのも、自分でも普段から着ていそうな格好だったので。今回の衣装はどれも好みで素敵でしたが、フォーマルかつ、少しパンクな感じの洋服が好きなのもあって、前述したふたつは全く別世界のもの、そして普段の自分に少し馴染みがあるものという点で、特に着ていて楽しかったです。

2017年に俳優としてデビューされてから今年で8年を迎えますが、ご自身の中で感じる変化はありますか? 反対に、デビュー当時と変わらないものはありますか?

外面的な部分や他者に見えているであろうものなどは、もちろん年齢とともに変わってきていますが、内面的なものや大事にしていることは、僕の中ではあまり変わっていないと思います。やりたいことに関しても、当時から変わらずにやり続けられているのは、すごく恵まれた環境にいるからだと実感します。

大河ドラマにご出演され、主演を務められた映画『シサム』では江戸時代前期の北海道を舞台にアイヌと和人の歴史を描いていましたが、文化的な内容の作品を演じてみていかがでしたか?

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、実在した歴史上の人物・公暁という役を演じたのですが、その時代の歴史そのものを学べますし、プレッシャーはもちろんありますが、演じていてとてもやりがいを感じました。この人はどんな人で、何をどう思っていたんだろうと実在した人のことを考え、想いを馳せる時間はすごく面白いですし、作品を見た方々に、結果的にその人物を知りたい、その時代や歴史を知りたいと思っていただけたらとても嬉しいです。

歴史に関わる作品の役が決まった時は、事前にたくさん勉強をしてから撮影に臨みますか?

かなりとまでは言えないかもしれないですが、失礼のない限りはやりたいと思っています。

大河ドラマや映画『シサム』で歴史的な背景のある作品を演じたことで、何かご自身の中で新たな気づきや変化を感じましたか?

異なる時代の作品を演じるということは、その時代のことを勉強するということ。どうしたって今日生きている時代とその時代では倫理観も違うので、気づきというよりは「この時代のほうが自分は合っていただろうな、この時代に生まれていたらどうだったんだろう」と考える時間が自然と増えますし、その時間すら楽しいです。江戸時代なんかはカッコ良いですよね。武士道という倫理規範の下で生きている人たちへの強い憧れはあります。今の時代を生きる人たちの中には、今日やりたいことがないという人も少なくないと思うのですが、誰かに仕え、その人のために命を尽くすことが当たり前という当時を生きる彼らは、常に“何のために生きるのか”を分かっていたんだろうなと。全うできることが生まれた時から決まっている。それがある種、羨ましいです。

時代劇にも多く出演されていますが、時代劇の魅力や難しさはどのようなところに感じられますか?

時代劇の魅力は、まず視覚的に面白いことです。建築物をはじめとする昔の時代風景、服や髪型ですら今とは全く異なる人たちを、観て感じることができますし、エンターテインメントとしても楽しめるので僕はすごく素敵だと思います。ただ、その時代の人物をそのまま描いてしまうと、現代では理解できない部分も生じてしまうので、時代劇ではありますが、当時の人たちと今の時代を生きる人たち、それぞれの想いに何か通ずる共通項を伴って“今の時代の時代劇”ができていると思っています。昭和に作られた時代劇と、令和に作られている時代劇も全然違う作品になっているだろうし、それが面白さであり魅力だと思います。時代劇を演じる難しさを挙げるとすると、言語や所作の違いです。今とは異なる時代の人物を普通に見えるように演じる、ナチュラルに生きる様を表すのは難しいなと。

『プロミスト・ランド』など、自然を相手にした作品へのご出演もあると思いますが、自然環境での撮影で、特に大変だったシーンや印象的なエピソードがあれば教えてください。

川に入るシーンがあったのですが、雪山の水がとても冷たくて驚きました。でも、寒さや暑さといった気候面で大変だったことはあまりないです。雨や天災などの影響はありますが、それよりも「このシーンはどうしよう」と撮影を進める中で考える、精神面的な部分の方がきついので、物理的なものは気合でなんとかなると思えます。自然の中で生活している役柄も、自然そのものが大変ということはもちろんありますが、乖離している気がするので。

映画『ナミビアの砂漠』でカンヌ国際映画祭に行かれた際の会場の雰囲気はいかがでしたか?

まさにお祭りでした。海外を訪れたというだけでもテンションが上がりましたし、楽しかったです。映画が好きで観に来てくれている方たちばかりだった 思うので、映画祭全体が僕たちを歓迎してくれている感じがしました。

カンヌ国際映画祭において、国際的な映画界での日本映画への反応について何か感じたものはありましたか?

日本では、観客が観賞後すぐに感想を伝えてくれるという機会がなかなかないのですが、カンヌ国際映画祭では、劇場を出た後すぐに観客が映画の感想を語ってくれて本当に嬉しかったです。演者、監督、観客みんなで一緒に作品を観て。同じシーンで笑いが起きたり、反対にここで笑いが起きるんだと驚くところもあったり。僕の印象ですが、フランス人は日本人よりシニカルな場面で笑うなと。でも国籍などは関係なく、男女のいざこざのような共通したものは、グローバル・スタンダードとしてあるんだなと知り安心しました。

ドラマ『グランメゾン東京』、12月30日(月)公開予定の映画『グランメゾン・パリ』では、今号の『GIANNA』で表紙を務める冨永愛さんとご共演されていましたが、冨永さんとの印象的なエピソードはありますか?

失礼な表現の仕方かもしれませんが、冨永さんは存在そのもの的な意味合いで“物体”としてすごいです。でも、とても気さくな方なんです。グランメゾンの共演者たちと飲みに行ったことがあって、冨永さん、玉森(裕太)くん、吉谷(彩子)さんと僕の4人だったのですが、誰とでも分け隔てなくお話しされていて、何に対しても笑っていた印象があります。なので、容姿のインパクトと内面的な部分とのギャップがある方なんだと思いますし、優しいイメージが本当 に強いです。

三浦透子さんとW主演を務めるドラマ『HEART ATTACK』の見どころを教えてください。

今までに描かれていそうで描かれていない近未来ものを、丸山健志さんという面白い映像監督が映像技術を駆使して、今までになかったことをやろうとしている作品になっていると思います。出演者も新進気鋭なユニークな人たちがたくさん揃っています。

今後、挑戦してみたい役柄はありますか?

実は、挑戦したい役柄は特になくて。それよりも、自分自身のそれぞれの役への取り組み方を色々工夫してやっていきたいなと思っています。二次元の脚本を三次元にするわけなので、口頭や文面では伝わらない“人間味”みたいなものが出せられるようになればいいなと。

俳優として表現することを通じて、伝えたいメッセージや届けたいものはありますか?

僕ら俳優の仕事は、例えばミュージシャンのように、自分が創作するものを自分の意思を込めて観客に伝えるわけではないので、僕個人が何かメッセージを伝えたい、ということはないのかなと。もちろん作品全体で伝えたいメッセージのようなものはあると思いますが、僕は与えられた役に徹底して素晴らしい、面白い作品を届ける。そういう表現の仕方は続けたいなと思います。

今号のテーマが“CHARISTMATIC”なのですが、カリスマ性がある人はどのような人だと思いますか?

これは皆さんにもお伺いしたいです(笑)。カリスマ性という言葉自体がすごく抽象的だとは思いますが、僕がカリスマだなと感じるのは、信念がある人。独自性を持った、独特な人もカリスマ性があるなと思います。

カリスマ性は自然に備わっているものだと感じますか? それとも努力によって磨かれるものだと思いますか?

カリスマ性には先天的なものと後天的なものが含まれていると思いますが、本音を言うと先天的な部分が多いのかなという気がします。

「カリスマ性がある」と感じる人は身近にいらっしゃいますか? また、その理由も教えてください。

たくさんいます。この業界は、いろいろなカテゴリーでカリスマ性を持ち合わせた人たちが多く集まる場所だと思うので。かといってカリスマ性がないというのも、決して悪いことではないと思っています。僕のイメージで言うと、カリスマ性を持っている人は、ある種どこか傲慢であったり、その場を掌握する力を持っているケースもあると思うんです。そういう人たちだらけだと、この業界は回っていかないので、カリスマ性は良い面とそうでない面の両面があるなと。

演技をする際、自分らしさはどのように表現されていますか?

自分自身の体を使ってそれぞれの役を演じるわけなので、自分らしさは自ずと滲み出てしまうとは思いますし、それは役によっても変わってくるのかなと。

ご自身の魅力や自分らしさは何だと思いますか?

生意気なところですかね(笑)。良い言葉に言い変えるなら、誰に対してもフラットなところです。基本的に誰に対しても首尾一貫していて、態度を変えたりすることはないです。

リラックスできる時間ができた時には、どんなことをして過ごされていますか?

人に会わずに家でひたすらゆっくりしています。誰かがそばにいたら何かしらの気遣いが生じるので、くつろげないことが多いと思います。だから一人でいる時の、他では見せられない感じがいちばんリラックスできているなと。もちろん友人と食事に出掛けたりすることも至福の時間ではありますが、リラックスするとなったら車でどこかへ出向いたり、サウナへ行ったりと本当に一人っきりで過ごすことが多いです。

最近観た映像作品で特に印象に残ったものがあれば教えてください。

『チャレンジャーズ』です。素晴らしくて、エンタメはこうでないと!と思える作品でした。

ご自身の人生において、俳優としてではなく、一人の人間として尊敬している方や影響を受けた方はいますか?

母親です。自分の経験則の外側にいる人で、面白さみたいなものをずっと持っている人。すごく厄介ですがカリスマ性に近いものがあり、厄介であるということは、その分魅力があるということ。そういう意味でここ数年、母親の魅力を再認識しました。

俳優としての今後の夢や目標はありますか?

細かいものはたくさんあります。大きな夢、目標として挙げるとするならば、大きい花火を見たいです。それは物理的な花火ではなく、“何かを成し遂げる”ということでもあるし、“何かが変わる”ということでもあって。自分が生きているうちに、本当に大きな花火を見ることができたらいいなと。自分で打ち上げるのもいいですし、第三者として見ることでもいいのかなと思っています。

30代を迎える前に実現したいことがあれば教えてください。

年齢についてはあまり気にしてはいないのですが、30歳という年はキリがいいので、自然と意識している部分はあるかもしれません。まだ20代を終えたくない気持ちがあるので、きっと20代をやりきれていないのかなと。なので20代を最後まで駆け抜けたいですし、まだまだ色々と挑戦していきたいです。

PROFILE 俳優 寛一郎 Kanichiro

1996年8月16日生まれ、東京都出身。2017年に俳優デビューを果 たす。同年に公開した映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第27回日本 映画批評家大賞の新人男優賞を受賞。翌年には『菊とギロチン』で 第92回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞や第33回高崎映画祭 の最優秀新進男優賞などを受賞。近年の主な出演作にNHK大河ド ラマ『鎌倉殿の13人』、TBS SPドラマ『グランメゾン東京』、映画 『せかいのおきく』『首』『プロミスト・ランド』『シサム』『ナミビア の砂漠』など。また、映画『グランメゾン・パリ』の公開を12月30日 (月)に控える。主演を務めた米・スカイバウンド×フジテレビ共同制 作ドラマ『HEART ATTACK』が25年配信開始予定。

Model:KANICHIRO(humanité) Photography:SHIGERU MASUI(AOI Pro. GLOBAL) Styling:RYOTA KOUJIRO Hair&Makeup:TAKAI Interview:SEIKA ARAI Edit:SEIRA MAEHARA