自然界と同様に、人々の人生も循環の中に存在するもの。パワフルでありながら、どこか儚げでやわらかい。そんなエネルギーの流れに身を任せ、幻想的かつ現実的な世界線が併存する愉悦の輪郭を、アーティスト・中島美嘉さんと描き出す。

今回の撮影ではどの衣装が印象的でしたか?
こんなにたくさんの衣装を着る機会はなかなかないですし、普段からあまり色が入った洋服は着ないので、紫のインナーを入れたビジューの衣装は特に印象的でした。プライベートでも、すごくバキッとした色のものを急に着たくなる時もありますし、意外にピンクはよく身に着けているので、W表紙になった衣装も好きでした。撮影自体もすごく楽しかったです。
強くもしなやかな様を表現した“strong and flexible”を今号のテーマとしているのですが、中島さんが描く理想の女性像はございますか?
結局シンプルに、カッコいいのが好きです。綺麗、可愛いという表現をしてもらえることも嬉しいのですが、どちらでもないカッコよさみたいなものが昔から好きで。お仕事でドレスをいっぱい着させていただくからこそ、バランスを取るために髪を切ったりもしていたので、何かに振り切らない中間のようなものに惹かれるのかもしれません。
幼い頃は声にコンプレックスがあったとのことで、どんなことがきっかけで歌手としての気持ちが固まったのでしょうか?
デビューが決まってからだと思っていて。歌い方を研究したり、色々と経験を積んでいくうちにもちろん自分の声は好きになったし、“歌”というものが大好きだということは間違いないのですが、自信があるかというとそれはまた別の話で、未だに自信はついていないんです。ただ、“上手い”の定義は人それぞれですし、ステージに上がったら自然と前向きな気持ちになるというか、それまでに練習は重ねてきているので、歌を通して気持ちを伝えること、伝わることを一番に頑張れたらいいなと私は思っています。
人生が動いたと感じる転機はございますか?
やっぱりデビューしたことが大きな転機といえますが、あれよあれよとことが進んでいった感じなので、正直な話、転機といってもどのタイミングを指すべきだろうという感覚はあります。デビュー時のことでしっかり覚えているのは、当時上京していたのですが、この一本が終わったら地元に帰るのか、こっちでバイトを探さないといけないのか、さあどうしようと考えていたことです。一つ仕事が終わったら、またオーディションを受けてイチから始めないといけな い、と勝手に単発的なことを思い描いていたので。周りのおかげで事務所に所属することができ、ソニーさんとも契約させていただいたのですが、当時はその意味が全く理解できていなかったんです。でも、デビューしたての頃のほうが最近のことのように感じるというか、全部ではないですけど、すごく鮮明に覚えていて。間のことは、記憶の時間軸がぐちゃぐちゃになってしまっているので、「この髪の時だから、あれより前の出来事かな」と、いつもその時の自分の髪型をヒントに、記憶を辿っています(笑)。
クリエイティブのソースとなっているのはどんなことですか?
なんだろう。でも、それがなんなのかが自分でも明確でないということは、頭の中で好きなものを自然とピックアップしていて、無意識下で常にインプットしているんだろうなと思います。「これをやって欲しいとお願いした時の、瞬発力が半端ないよね」と旦那に言われたことがあるのですが、仕事内容や職業柄などに関係なく、それはみんな同じくやっていることだと思っていたんです。たまたま私は、人より色々なことが遅いタイプなので、だからこそ常日頃からアンテナを張ってキャッチしたり、行動に移したりするようにしているんだなと思います。
歌手、俳優業とたくさんのシーンで活躍されていますが、それぞれのお仕事への向き合う姿勢は異なりますか?
気持ちの持っていき方は一緒だと思います。どちらにもそれぞれの難しさがありますし。ただ、俳優業に関しては覚えるのだけ早くて、応用を効かせることが苦手で。自分なりにセリフを解釈して自由に演技をしてください、となるとフリーズしてしまうので、それこそ原作があり、事前に全体図を知ることができたり、この通りに動くという筋書きがあるのならば、そのほうが私には向いているのかなと感じます。
デビューから20年以上が経ちますが、働き方は変わりましたか?
本当に最近になって、まず自分の人生があって、その中で楽しく音楽をできたらいいなと感じるようになりました。それまでは全く逆で、仕事が先にあって、合間で人生を生きるみたいな感覚でしたが、自分がいっぱいいっぱいになってしまいそれが伝わってしまうと、ステージに悪い形で影響してしまうのではないか、見てくださる方も面白くなく感じてしまうのではないかと思うようになって。歌のことは歌のことでもちろん毎日考えてはいますが、ライブ前以外は、仕事のためだけに動くということはあまりしないようになりました。
お仕事をする上で軸に置いていることはありますか?
自分のスタイルみたいなものはずっとあって、大事にはしていますが、その枠内だけで自己完結することはないようにしています。自分の好きなことや自分の感覚だけで進めてしまって、全部を自分で決めてしまうと、アップデートされなくて面白くなくなってしまう。アイデアもポンポンと湧いてくる訳ではないので、周りの力も借りるし、周りの言葉も聞くようにしています。ただ、絶対にこれはやりたい!ということについてはしつこいです(笑)、やるまで言っているの で。それさえ叶えば、他のことはみんなで話しながら物事を実現していく、そのメリハリは軸に置いていることかなと思います。
歌手として今感じることはありますか?
人に対して私が共感することを、自分の歌のテーマとしていて。年数を重ねて経験が増える分、共感することも多くなってきているので、若い頃に歌っていた歌や書いていただいた歌詞、自分で書いた歌詞さえも、今のほうが響くと感じることが増えました。
普段はどんな音楽を聞かれますか?
ジャンルは幅広いと思うのですが、その中にも自分のツボがあって、同じ曲をずっと聞いたりしています。歌って踊るアイドルの曲も、かっこいい!と聞いたり、今まで知らなかったの?と世間が思うような有名な曲も、急にハマって周りに「これカッコよくない?」って言い出したりすることもあります(笑)。
日々の生活にも、ともに音楽があるほうですか?
日によるのですが、静かなほうが好きなので、家で音楽をかけていることも、テレビをつけていることもあまりないです。猫のためにテレビをつけることはあって、テレビを見て遊んでいる猫を見るためにつけているくらいで、ほぼ無音です。場所的にも家の中が静かなので、少しでも音が鳴ると逆に気になってしまうのかもしれないです。そこで猫の鳴き声が聞こえたりすると、つい遊びたくなってしまって、完全に猫のしもべ状態になっています。
アジア各国でツアーをされていらっしゃいますが、日本と海外の熱量は異なりますか? 国によってプログラムは変えたりするのでしょうか?
それぞれ違います。この国だからということではなく、初めて行くからこそ歌いたい曲があったり、各地でどんな曲が人気かなどは前もってリサーチしたり。何度か訪れたことがある場所では内容も変えて、何度でも楽しんでもらえるように工夫しています。
今回のツアーでは、衣装もすべて中島さんがデザインされたとお伺いしたのですが、どんなお衣装なのでしょうか?
「ヴィヴィアーノ」と一緒に作らせていただきました。バラードコーナー、ロックコーナー、ドロドロコーナーなど、私は一つのライブの中で5つほどにコーナー分けをするので、それぞれに合わせた衣装になっています。持っている服を改造したものもありますし、ファッションは大好きで、普段から色々な服を見たりしているので、こういう服が着てみたいというインスピレーションが常にあって、それを形にしていただいています。
普段はどういうファッションがお好きですか?
仕事との違いという意味では、最近のプライベートではぱっと着られる楽な服装が増えました。ただ、あまり好きなテイストが変わらないこともあって、楽な服も着つつ、もう十何年ずっと同じものを着ていたりもします。
健康や美容のために心掛けていることはありますか?
自分なりにではありますが、勉強をしながら色々と実践していて。分かりやすいことでいうと、腸活です。腸活を意識するようになって、周りから健康的だし変わったよねと言われることが多くなりました。喉をはじめ、保湿も怠らないようにしています。すごく乾燥肌で、元々アトピーだったこともあり皮膚がすごく薄くて、若い頃は美容というより治すことに必死だったので、保湿の重要性は身にしみて感じています。健康や美容にいいといわれていることは私も色々とやってみましたが、人によって体質は違うので、自分に合うと感じたものを続けるのが一番なのかなと思います。
やってみようと思ったことはなんでもトライするタイプですか?
やりまくります! もう、体を壊すぐらい(笑)。
自分時間ができた時はどういったことをすることが多いですか?
ずっと猫と一緒にいます。本当に可愛いんですよ。嫌われてもずっと猫を追いかけて遊んでいます。
ご自身にとって一番のご褒美はどんなことですか?
昼寝です。夜寝ることが、私はなんだか上手ではなくて。明日のことを考えると頭がぐるぐるしてしまうのですが、昼であれば明日はまだ先のこととしてとらえられるので、安心して寝られるのかもしれません。昼寝って一番の贅沢じゃないですか。猫にも、お願い! 一緒にゴロゴロしようとよく声を掛けているのですが、絶対一緒に寝てくれないんです(笑)。
疲れが溜まった時はどうリフレッシュしたり、エネルギーをチャージされたりしているのでしょうか?
休みの時はゆっくりしていることもありますし、みなさんイメージにないとおっしゃるのですが、実はこ 見えて運動は結構好きなんです。あとは掃除をしたり、ずっとキッチンに立っていたり、猫を追い掛けていたり、家のことをやっているだけでも十分な運動量だなと最近思っていて。それでリフレッシュできているのかもしれません。
これだけは譲れないというマイルールはありますか?
帰宅した後に座ってしまうと動けなくなるのと、そもそも外着で座りたくないので、家に帰ったらまず部屋着に着替えて、やることを全て終えてから座ったり、寝る準備をし始めるようにしています。その日中にやらないといけないことは、終えないと絶対座らないです。母親は私の性格をよく分かっていたんですよね、「座る前にこれとこれ、全部やりなさい」と言われて育ったので。おかげでそれが身についたので、感謝しています。
落ち込んだり悩んだりした時は、どう乗り越えることが多いですか?
焦って乗り越えようとしないほうがいいんだろなとは思いつつも、やっぱりずっと考えてしまうタイプなので、逆に考えることをやめようとしなくなった気がします。我慢は身体に悪いと思うので、喜怒哀楽を出して素直になること、溜め込まずに色々なことを出していくことがヘルシーなのかなと感じています。
歳を重ねるごとに、我慢をリリースできるようになったという実感はありますか?
若い頃のほうがリリースしていたと思います(笑)。抑えていなかったし、周りにいっぱい迷惑をかけて、その後に大後悔することも多くて。今はまだそのコントロールができるようになったのかなと。
今後の展望を教えてください!
将来のことというよりは、今の自分がどれだけ楽しんで精一杯やれるかを考えています。これからも、一瞬一瞬を大切にしたいです。
PROFILE アーティスト・俳優 中島 美嘉 Mika Nakashima
1983年2月19日生まれ。鹿児島県出身。初めてレコード会社に送ったデモテープがきっかけとなり、2001年にドラマ『傷だらけのラブソング』のヒロインに抜擢され、同ドラマの主題歌『STARS』でデビュー。2ndアルバム『LOVE』はミリオンヒットを、シングル『雪の華』など多数大ヒットを記録。2005年には矢沢あいの人気コミックを原作にした映画『NANA』に主演し、NANA starring MIKA NAKASHIMA名義で同映画主題歌『GLAMOROUS SKY』を歌いチャート1位を獲得。2016年より台湾、中国深セン、上海公演を実施するなどアジアでの活動も勢力的に行い、現在初のソウル公演を含む、アジア6都市での単独公演「MIKA NAKASHIMA ASIA TOUR 2025」を開催中。
Model:MIKA NAKASHIMA(OUR SONGS) Photography:KIZEN(W) Styling:KOSEI MATSUDA(NOBODCR) Hair&Makeup:HIROKAZU NIWA(maroonbrand) Edit&Text:SEIRA MAEHARA