表現者として飽くなき探求を続け、常に新たな地平を切り拓く俳優・福士蒼汰。今回彼が体現するのは、光と影が激しく交錯する日食のような、神秘的かつエッジの効いた世界観。芝居の枠を超え、ファッションというキャンバスに描かれた、彼の現在地がここにある。

INTERVIEW
今回、「GIANNA」の撮影はいかがでしたか?
9ポーズも着させていただく機会はなかなかないので、新鮮な気持ちで楽しめました。
お気に入りの着こなしや、新鮮な着こなしはありましたか?
サンローランの黒いジャケットが良かったです。シルエットがきれいで、フォーマルなジャケットに太めのパンツを合わせて、絶妙にカジュアルな感じが出ていていいなと思いました。アルマーニのアイテムも良かったです。ワイルドな感じが素敵でした。ブルゾンの下にシャツやカットソーを着るスタイルは、普段の僕にはない着こなしだったので、ワクワクしました。
今、何か探しているアイテムはありますか、と聞いたら…。
やっぱりパンツですね(笑)。今回の撮影で履いたロエベの白いパンツが気になっています。サイズ感がバッチリで、シルエットもきれいで。タックが入るだけで、きれいな印象に見えます。ボックスタイプでストレートのパンツはカジュアルになりがちですが、タックが入ると少しフォーマルさが出るというか。リッチな感じがいいなと思いました。
Netflixで配信中の韓国ドラマ『恋の通訳、できますか?』では、“ロマンスの王子”と呼ばれる人気俳優・黒澤ヒロを演じています。韓国制作の作品に出演しての感想を聞かせください。
以前、スペインで撮影したドラマ『THE HEAD Season2』に出演させていただいたことをきっかけに、海外作品への挑戦に対する思いが強くなりました。「恋の通訳、できますか?」は韓国の作品ということで、どんな作品になるのかとても興味がありました。今回は日本語でお芝居をする役どころでしたが、日本語と韓国語が飛び交う作品の中でどんな演技ができるのか楽しみでした。
日本の作品と海外の作品で、日本語で演技をすることに何か違いはありますか?
実際に経験して、海外で日本語の芝居をすることの難しさを感じました。今回は「日本語で」というリクエストに加えて、ヒロを演じる上で日本人らしさを出してほしいというリクエストもありました。衣装は日本で用意をして、メイクさんも日本人の方に同行していただきました。役柄に沿った衣装でありながらも、無理に“日本人らしさ”を出そうとするとかえって不自然になってしまうので、あまり意識をしすぎないことが日本人らしさにつながるのかなと思い至りました。
韓国のチームとのお仕事はいかがでしたか。
本当に熱量の高い人が多かったです。撮影監督が日本の映画や文化が大好きで、僕が出演した日本でのシーンは畳の部屋での撮影でした。「畳を撮るのが昔からの夢だったんだ!」と本当にうれしそうでした。日本映画の偉大さを韓国のスタッフさんから感じることもあり、日本のことがすごく好きだと言ってくださる方も多かったです。
本作で共演した韓国のトップスター、チャ・ムヒを演じたコ・ユンジョンさん、ムヒの仕事に同行する多言語通訳士、チュ・ホジンを演じたキム・ソンホさんはどんな方でしたか?
ソンホさんとは共演したのが2シーンほどしかなく、もっと話せたらよかったなと思っています。韓国でご飯に連れて行っていただき、ユンジョンさんも交えてサムギョプサルを食べました。ユンジョンさんは英語が話せるので、僕の拙い韓国語と英語でかなりコミュニケーションが取れました。天真爛漫で明るくて、現場の空気がパッと華やぐような方でした。
最初、黒澤ヒロをどういうキャラクターとして捉えましたか。実際に演じて、印象に変化はありましたか?
ヒロは結構直接的で僕と近しいと感じるところがたくさんありました。海外に挑戦したい気持ちや、若いときから役者の仕事を続け、いまの自分の実力を確かめたいという思い。僕自身が持っているそういう気持ちをヒロの中にも感じました。好きな人にいたずらをしたり、意地悪をしたりしながら、心の底ではまったく違う思いがあるところもほほえましかったですし、人を好きになったときの感情は理解できました。
ヒロを演じて、印象に残っていることはありますか?
撮影が進むにつれて、監督や脚本家の方がヒロを僕に寄せてくれました。だんだん韓国語を話せるようになるところもそうですし、最後に英語を使う芝居を入れてくださりました。僕が体を鍛えていることもあって、筋トレやボクシングのシーンが加わり、ハリウッドのアクション映画に挑戦しようとしているヒロの心情が伝わるシーンも足してくださりました。最初の段階では脚本の後半がまだ完成してなかったので、僕自身を役に反映していただき、ヒロのキャラクターがどんどん厚みを増していったと思います。
ご自身とリンクする部分がある一方で、自分にはない部分はどんなところですか?
言動はかなり違うと思います。僕はあまり表裏がありませんが、ヒロは“ロマンスの王子”という表があったとしたら、裏側はすごくトゲトゲしています。そこは真逆と言えば真逆ですね。
ヒロの注目ポイントや、楽しんでほしいところは?
ヒロにとっては成長物語でもあるので、冒頭は嫌な奴というか、嫌われる役どころでいいと思っています。最後まで見ていただけると、ヒロの魅力的な部分、純粋無垢な部分が現れていくので、ヒロがどんな風に人として、俳優として成長していくのかを見届けていただきたいです。
では、作品全体の見どころを教えてください。
ラブコメなので、「どうせ最後は主人公の恋がうまくいくんでしょう」と思う方もいるかもしれませんが(笑)、恋愛が成就するまでの過程に注目いただきたいです。人生、紆余曲折ありながら、いろんな感情を抱き、他の人と交わりながら生きていくもので、何事も過程が大切だと思います。この作品では、生半可な覚悟で幸せはつかめないということも描いています。物語は“言語”が大事な要素で、韓国語同士、日本語同士でも伝わらないことがある中、違う言語だからこそ伝わる瞬間もあります。最終的には、言語の壁を超えて一番大切なのは気持ちだということが伝わる作品になっていると思います。
福士さんはこれまで、ラブコメ作品にあまり縁がなかったそうですね。
ラブストーリーだと純愛ものが多く、ラブコメはありませんでした。純愛ストーリーは、普段の生活の延長線上にあるというか、日常の生活を送っている中で、人を愛する感情が描かれる“人間ドラマ”でもあると思っています。ラブ×コメディになると、リアルな生活からちょっと離れたお芝居を求められることもあるので、今までの作品とは違う経験をたくさんさせていただきました。振り返ると楽しかったですね。普段からよく冗談を言ったり、ふざけるのも好きなので。しかも今回は、恋をするふたりをかき乱すポジションなので、恋模様をかき乱せば乱すほど、それがヒロの魅力やかわいらしさにつながります。第9話でヒロのお姉ちゃんが登場しますが、お姉ちゃんとのコメディチックなやりとりの中でヒロの人間味を表現したシーンはやり甲斐を感じました。
『恋の通訳、できますか?』をご覧になった方からはどんな意見が届いていますか?
「新しい役回りだね」とよく言われます。今までこうした立ち位置の役を演じる機会があまりなく、基本的にはいつも恋愛が成就する役が多かったので(笑)。今回は恋が報われない役どころだったこともあり、そういう部分も含めて珍しいという声が多かったです。韓国のドラマに、“セカンド・リード・シンドローム”という言葉があります。日本語でいうと、“二番手男子 症候群”みたいな意味になるのかな? 二番手の男性キャストを主人公より応援してくれる現象を指していて、ヒロはまさにそういう魅力のあるキャラクターだと海外の方から言っていただきました。
日本の作品でも“当て馬キャラ”のほうが魅力的に見えて、人気が出るパターンがありますよね。実際、そういうポジションを演じていかがでしたか。
今回は三角関係ではなく、共演したムヒに一方的に恋心を抱いているだけで、ムヒはヒロのことをまったく気にしていません(笑)。ヒロが“セカンド・リード・シンドローム”のような人気を得ることを全く想定していなかったので、いろんな国の方々から、そういう声をいただけたことがうれしかったです。
グローバルな作品に出るときは、日本制作の作品に出るときとは心構えが違いますか?
スペインの作品に出演したときは、ボディランゲージを多用してほしいとお話しがありました。僕は普段からボディランゲージを使う方なので、意外と自然にお芝居ができましたが、アジア人は体を使って感情を表現することに慣れている人は少ないと思います。アジア圏の場合は身振り手振りに頼らない芝居をすることが多いですし、それを求められる時もあります。求められることに応えながら、気持ちの面ではどこの国の作品に出演しても自分らしさを失わない演技をすることを心掛けています。
今秋以降に公開予定の映画「花臉猫:修羅道」 も台湾の作品です。日本と韓国、台湾と現場の雰囲気はそれぞれに違いますか。
日本は「こうなったらこうなる」、「こうしたらこうなる」ということを理解している方が多い気がします。韓国はアジアで一番大きいプラットフォームになってきていて、積極的にアメリカの撮影スタイルを採用している点が印象的でした。僕が今回出演させていただいた台湾作品は、アクション映画です。予算のかかるアクション映画は台湾で年に1本作られるかどうからしく。しかもこの作品は女性が主演です。女性が主演のアクション映画は台湾史上初めてかもしれない、ということでした。「台湾アクション映画の歴史を変えていくぞ」という気概を感じられて、そういう作品に携われたことがうれしかったです。
今後、挑戦したい国の作品はありますか?
アメリカの作品に出演したことがないので、ぜひ参加したいです。今後も国、土地、人種、さらに作品の規模を問わず仕事をしたいというのが僕の夢、生き方だと感じています。
人種や国境を超えるために、福士さんが大切にされていることは何ですか?
言語を勉強することが好きなので、訪れた国の言葉を学ぶこと。それが一番ですね。決して簡単なことではないですが、言語の交換は、心が開かれる瞬間が分かりやすいです。
今はスマホの翻訳で海外の人と簡単にコミュニケーションが取れます。それでもやっぱり、自分の言葉で話すのが大切ですか?
例えば、目の前で作ってくれたご飯と、工場で作られたご飯。もちろん工場で作られたご飯も美味しいと思います。反対に、その土地の人が作ってくれた、自分の味覚には合わないかもしれないけれど、手作り料理の良さもあると思うんです。言語も同じで、下手だとしてもその国の言葉で話す。そこで感じられるものがたくさんあるからこそ、僕は最初に言語を勉強することを大切にしています。
ところで、1月クールの主演ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』が放送中で、最終話の後からはFODでSeason2が独占配信になります。警察ものながら広報が舞台と、これまでにない設定の作品ですが、企画を聞いた時の感想は?
警察の話といえば、事件が起きて、所轄の刑事がそれをどう解決していくのか、といった展開の作品が多い中、今回は捜査権のない広報課にスポットを当てると伺い、派手な展開は難しいだろうなと思いました。台本を読ませていただいたときに、少しポップな要素が組み込まれていたのですが、僕としては全編シリアスなものにしたいと思い、提案をさせていただきました。プロデューサーさんの中に、実際に警視庁担当記者だった方がいらっしゃり、リアルを知っている方が当時の体験をそのまま台本に落とせば、本物ができると思い、制作陣の皆さんがそこに乗ってくれました。芝居に嘘がなく、とことんリアルを追求したら、想像以上の重厚感を出すことができ、視聴者の皆さんだけでなく、ドラマを作っている業界の人たちなど、多くの方から評価する声をいただきました。
福士さんは、ご自身が演じた今泉麟太郎を最初はどんな人物と捉えましたか?
捜査一課の刑事 になることを目標に、警視庁に入りながら、広報課に異動になり、最初は戸惑いながら広報業務に当たっていました。 社会というものにもがく青年ですね。30代になり、ある程度世の中というものが分かってきたつもりですが、社会の中で30代はまだ決定権がある年頃ではありません。“中間”のポジションでもがいている。自分の正義はあるけど、それを貫いたら組織というものに潰されることは理解しているし、こういうことは警視庁だけでなく、社会全体でも同じだと思います。先輩や上司に取り入る人が勝ち、みたいな。それがお前のやりたいことなのか、それが正義なのかと問われたら、そうではないけれど、いまは自分を曲げて上り詰めたとき、自分の思う正義を貫けることもあるだろうし、“我慢する”ことが正義になるときもあります。今泉は答えを出せないままどう行動すべきか悩んでいるところです。
警察だけでなく、どんな組織、社会でも共感できるテーマだからこそ、多くの共感が集まったのかもしれないですね。
「麟太郎を見ていると心が痛い」、「今泉くんの気持ちがよく分かる」という意見をよく聞きます。
今泉と福士さんに共通する部分はありますか?
全然違う気がします。正義や自分の軸があるのは同じですが、僕は行動を起こす前に頭を使って考えます(笑)。今泉は思ったことを口に出し、すぐに動き出してしまいますが、そういうタイプの人間が世の中を動かしていくのかなと考えたりもします。今泉の行動力や発言力には正義感があり、第1、2話でも今泉の言動が周りの人の心を動かして事件解決にもつながっているので、突発的な行動をする人こそ、周りに影響を与えることが分かりました。
Season2の見どころは?
Season2もかなり面白いです。全話を通して、ひとつの物語になっています。かなりのボリュームがあって、事件だけでなく人物描写もさらに深掘りしているので、実際にこんな事件があったかもしれない、と思わせるリアリティと合わせて楽しんでいただきたいです。
今年でデビュー15周年ということで、これまでの歩みを振り返っていただけますか。
15年と聞くとあっという間に感じますが、振り返ってみると前期と後期、7年半ずつでまったく違う時間を過ごしてきたように感じます。前期は本当に多忙で、与えられたことをこなすのに必死な日々で、余裕をもって自分自身と向き合う時間があまりなかったようにも思います。デビューから7年ほど経ったとき、自分をリセットしたいと思い3カ月ほどアメリカに行きました。芝居の勉強をしながら、たくさんの人と出会い、交流を深る中で、本当にやりたいことを考えるきっかけになりました。格闘技を習い始めたり、興味のあったピアノを練習したり、言語の学習により力を入れたり。その中でグローバルな作品への出演が実現して、やっと自分の方向性が見えた気がします。今泉の話じゃないですが、自分の思いや希望を伝えることで、それをバックアップしてくれる周りの人たちの協力もあり、海外の作品に出演することができました。“言霊”という言葉があるように、周りの人に伝えることで自分のモチベーションも上がるので、とても大事なことだと、ここ2、3年より実感しています。
ご自身にとってターニングポイントになった作品、特に記憶に残っている作品はありますか?
『恋の通訳、できますか?』は世界に一歩踏み出せたという実感があります。芝居に関しては、成島出監督とご一緒した映画『ちょっと今から仕事やめてくる』(17年)です。当時23歳で、芝居のしの字も知らないときでした。成島監督には愛のある指導で1から丁寧に教えていただきました。いま振り返ると、成島監督にたたき込まれたものが、自分のお芝居の根底にあると思います。
福士さんは3年前、30代を迎えました。俳優としてどんな30代を過ごしたいですか?
「福士蒼汰が出ている作品って、おもしろいよね」と言われるようになりたいです。僕自身が前に出るというよりも、僕の演技によって作品がより魅力的になる、そんな存在でありたいと思っています。
俳優を続ける上で、刺激を受けている俳優やクリエーターの方はいらっしゃいますか?
もう一度、刑事ドラマ『アバランチ』(21年)を全面的に手掛けた藤井道人監督と組みたいです。いつか一緒に何かできたらいいなと思っています。
では、今後を見据えて思っていることがありますか?
日本と海外、二足のわらじで歩くことが、僕の目指す生き方だと思っていて、海外の作品への挑戦や出演が人生でやるべきことの大きなひとつですね。日本生まれ日本育ちの僕が海外に挑戦して、ある程度の実績を収められたら、後に続く後輩たちに刺激を与えることができると考えています。帰国子女でもない僕のような人間でも、独学の勉強でここまでできるんだというところを見せられたらと思うので、自分の目標を何としても達成したいです。
今回、「私を弾ませるもの、高鳴るもの」が全体のテーマです。福士さんの心を弾ませるものとは?
言語が伝わったときです。言葉が伝わったときが一番うれしいですし、反対に分からなかったときは悔しいです。言葉を通じてコミュニケーションが取れたとき、僕も相手も笑顔になった瞬間は心が高鳴りますね。
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
国内外問わずいろんな形で応援してくださる皆さんと会える機会を作っていきたいと思っています。最後まで読んでいただきありがとうございました!
PROFILE
俳優 福士蒼汰 SOTA FUKUSHI
1993年5月30日生まれ。東京都出身。2011年1月、『美咲ナンバーワン!!』で俳優デビュー。同年9月より『仮面ライダーフォーゼ』の主人公・如月弦太朗役でテレビドラマ初主演を飾る。『恋の通訳、できますか?』がNetflixで配信中。『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ系)放送中。最終話放送後から『東京P.D. 警視庁広報2係 Season2』がFODで独占配信。映画『TOKYO BURST-犯罪都市 -』(5月29日公開予定)では犯罪集団のボス・村田蓮司を演じる。今秋以降に台湾映画「花臉猫:修羅道」の公開も控えている。
Model:SOTA FUKUSHI(KEN ON) Photography:SHUN SASAKI(SIGNO) Styling:YOHNOSUKE KIKUCHI Hair&Makeup:KOICHI TAKAHASHI(Nestation Inc.) Interview:AOI TANAKA Edit&Text:RYOTA KOUJIRO
