解き放たれた想像力は、型に縛られない自由な発想と、枠組みを超えた表現の力で新たな美を描き出す。ファッションは単なる衣服ではなく、未来を映し出すキャンバスとなり、想像を纏うことで私たちはまだ見ぬ自分に出会っていく。

INTERVIEW
今回「GIANNA」初出演ですが、撮影はいかがでしたか?
やったことのないスタイリングばかりで、撮影も含めて改めてファッションの面白さをすごく感じました。中でもFerragamoのコートはすごく品のあるおしゃれさで、自分もああいったものが似合う大人になれたらと思いました。
庄司さん自身はキレイめなスタイリングの方が好きですか?
そうですね。自分が持っている服は基 本的にそういった系統が多いですが、その分今日のようなファッションシューティングで、BALENCIAGAのようなかなり遊びのあるスタイリングも着ていてすごく楽しいので、今回はいろいろなものを着ることができて、楽しかったです。
私服はどんなものが多いですか?
トラッド系が多いです。シンプルにまとめつつ、昔のブリティッシュトラッドやヨーロピアン風にすると自分のスタイルが活かせるので、それをベースにシーズンごとに気分で変えています。今年の夏は、ジャストサイズのかなりタイトな短めのシャツに、ワイドシルエットのパンツで、Aラインスタイルが気分でした。シンプルすぎないようにアクセサリーをつけて、自分のボディフレームを活かせるようなスタイリングにしています。
秋冬はどんなスタイリングをしたいですか?
ロンTやボタンシャツ、薄手のジャケットをさらっと着るのが好きで買うのですが、秋が短くて、登場シーンが来ないんですよね(笑)。冬になると防寒がメインになってきますが、その分アウターを脱いだ時にセーターやスウェットに少し遊びがあるようにしています。僕はすごく汗っかきで、グレーの服もめちゃくちゃ可愛いなと思いますが、僕が着た1分後にはグレーの色がすべて変わっているぐらい汗をかいてしまうので、夏は服が全部モノトーンになってしまうんです。なので、汗をかく心配がないシーズンにはビビットなカラーにも挑戦するようにしています。
いろいろ挑戦されるんですね!
あまり自分から言うものではありませんが、着て難しい服がないんです(笑)。大体楽しく着られるので、怖がらずにいろいろなものに手を出して、違ったなと思ったら別のものに挑めばいいと思っています。トレンドがあるのがファッションの醍醐味だと思うので、囚われすぎずにいろいろ着るようにしています。
服を選ぶ上で参考にしているものはありますか?
ここ2、3年はファッションショーを見るようになりました。映像でも画像でも全ルック確認できるので、パリコレはかなり尖っているので眺める程度ですが、ミラノやニューヨーク、ロンドンコレクションは見ていて面白いですし、自分でもこういうスタイリングをしたいなと思うものが出ているので、見るようにしています。
ファッションは昔から好きだったのでしょうか?
全然です。19歳でこの仕事を始めましたが、それまでは母が買ってきたもので、畳んである服の一番上にあるものを1枚ずつ取って着ていました。捕まらないために服着るというか(笑)、人間だから服を着るぐらいの感覚で、何がいいのか悪いのかもわからなかったです。仕事を始めてから表に立って、身長もそれなりにあるので、俳優が入口でしたが、モデル業もできるんじゃないかなと思い、最初は勉強で、大学の図書館で雑誌を読んでメモをしていました。
勉強家なんですね。
ある程度必要性に駆られてという部分も多いですが、どこかのラインから面白くなってきて、人間だからいいように見られたいという気持ちもありますし、いろいろなものを着て「ダサい」と言われたこともたくさんありますが、どこかのタイミングで、僕のダサい頃を知っている友達から「オシャレになった」と言われて、そこから服を着ることの恐怖心みたいなものがなくなってきました。あとは、役者としてできた友人など、すごくファッションが好きで、いろいろな服を買っている人に「服を買いに行こうよ」と言われて、僕の人生に20年間一切なかった“友人と服を見に行く”という出来事があり、普段は寄らないようなお店に入って試着してみたり、「世の中にはセットアップというものがあるらしい」など、基本的なことから学びました。周りの環境が変わって、いろいろなものが見えるようになった部分もあると思います。
「これは自分らしい」と思うアイテムはありますか?
自分の人生の中で一番高い買い物が、20歳の時に買った腕時計で、それは今かっこいいものではなく、10年後や15年後にこれをつけて、似合う男性だよねと思われるようになりたくて、かなり背伸びをして買いました。今つけてもすごく気持ちが引き締まりますし、5年前より似合っていたら嬉しいなと思いながらつけています。
自分の中で昔と変わったなと思う部分もありますか?
変わりましたし、変わらなきゃなと思っています。20歳と25歳で言っていることが一緒だったら成長しているかどうかはわからないですし、変わっていきたいと思っています。26歳の年になりますが、30歳、40歳になったら、その時はその時で違う角度で物事が見えていたら嬉しいですし、身につけるアイテムも変わっていってもいいのかなと思います。ただ、25歳くらいから長く着られる、つけられる、履けるものを探すようになりました。ブーツやアクセサリー、少しいいコートを着たりと、前までは今シーズンだけ着るようなトレンドを押さえにいっていましたが、今年からは長く一緒にいられるアイテムを探すようになっています。
今回、「Innovate Imagination/想像力が私を導く」が雑誌全体テーマですが、想像力が自分を導いたと感じた瞬間はありましたか?
人それぞれの考え方があると思いますが、僕は役者という仕事自体を「嘘をどれだけ作れるか」だと思っています。例えば、僕はヒーロー作品をふたつやっていますが、普通に生きていて、怪人は出てきたことないですし、パンチもキックも変身したこともないですが、それを見たい子どもや大人のファンの方がいて、本気で作ってる人たちがたくさんいるんです。その時に“どうやったらその世界にいられるか”、“どれだけその世界をリアルに考えられるか”が大切だと思っています。特にグリーンバックや合成の撮影は、ないものに対して芝居をするので、大嘘だと思うんです。でも、実際に出来上がった時に、何も考えずに見ていられたり、感動してくれる、悲しんでくれる、喜んでもらうには、僕らがこの緑色の背景の中に一体何があるんだろうというのをどれだけ考えられるかだと思うので、役者という仕事自体、イマジネーションに頼ってできている仕事だと思っています。
想像力から新しい表現につなげるために、普段から意識していることはありますか?
見聞を広めることです。見たことのないものを見る、知らなかったものを知る。無知が恥とは言わないですが、無知でい続けることを良しとしないことは必要だと思っています。例えば、人殺しの役があった時に、実際に人を殺すわけではありませんが、それに近い感情やシチュエーションを探してみたり、本や漫画を読む、アニメ見る、ドラマや映画を見たりと、 いろいろなところにきっかけや可能性などのヒントがあると思います。
それは役者になる前からですか?
デビュー当時よりもいろいろなものを食わず嫌いせず見られるようになったと思います。本はもともと好きなので、読書するのも好きですし、自分で書いたりもするので、それはいろいろなところから吸収しています。
庄司さんは語学堪能だったりと、何事に対しても勉強熱心なイメージがあります。
勉強はしました。英語の勉強もちゃんと始めたのは18歳の時で、もう大人の脳になっていたので、子どもの頃みたいに音楽や会話を聞いていたら、自分もというわけにもいかないので、分厚い参考書の暗記をしたり、オンライン英会話もたくさんやりました。その先に芸能という仕事をしていなかったとしても、外資系に行ったり、留学に行っていたかもしれないですし、この仕事でも、海外に行ったり、海外のスタッフの方と話す時に通訳を通すと、本音やリアルなテンポで話せないと思うんです。そういう時は大体時間制限があると思うので、通訳を挟んでいると、2分の1の時間になってしまって、大した挨拶もできずに終わってしまうのであれば、自分でできた方が早いですよね。そこから、ファッションであればフランス語を喋れた方がいいなと思い、フランス語も勉強しましたし、中国語も市場が大きいというビジネス的な側面や、コミュニケーションツールとしてもあった方が便利かなと思い、勉強しています。
何かを続けるコツはありますか?
2パターンあると思っていて、ひとつは、「これができたら外国人の友達ができるかも。海外で働きたい。俺はもう絶対アメリカンドリームを叶えるんだ!」など、ポジティブな導線を引くことです。もうひとつは、ネガティブマインドセットをひたすら持つことです。僕はこの後者ですが、例えば、「今勉強しなかったら、一緒に勉強してる人との差が生まれる。僕は海外で仕事したいのに、今英語の勉強をしなかったら、ひたすら恥をかくことになる」というのを頭の中にすりこんで、追われるように勉強しました。
「Imagination Unbound/解き放たれた 想像力」が企画テーマでした。日常の中で想像力が解き放たれる瞬間はどんな時ですか?
僕は去年ぐらいから小説を作っていますが、ベースが0の状態から作るので、すごく自分の想像力がいると思っています。こういう光景を文章で書きたいと思った時に、自分の語彙力や、いろいろなものを見たり聞いたりして、創造の解像度を上げていくと、より立体的に表れると思っていて、それは想像力が爆発している瞬間だと思います。
そういったクリエイティブ面での想像力はどこから来ていますか?
勉強や人との会話、ニュースを見たり、友達と遊んだり、最近は結婚した友達も増えてきたので、子どもとも遊んだりしています。日常的に一緒にいる相手とのコミュニケーションも大切ですが、大きく変化することが少ないので、他のグループに入ってみたり、子どもと一緒に遊んでみると、自分が当たり前に受け入れていたことにすごく葛藤していたりして、例えば、「なんで太陽は光っているの?」と言われても確かに答えられないなと思ったり、そういったことに気づかせてもらえたり、ひょんなことからきっかけやパワーをもらえたりします。
文章を書く時は思いつきで書き始めるのでしょうか?
締め切りが迫っている時は椅子に座って、とりあえずパソコンの画面を開いて、ハッと思いついたら書いて、粘ってという感じです。普段から面白いと思ったものをメモしたりしているので、この間は魔法の話を書きたいなと思って、いろいろ見ていた時に、「現代社会で炎を出せる魔法ってほぼ意味ないじゃん」と気づいてメモしていました。これはハリーポッターの世界だからこそかっこいいですが、令和でいきなり炎が出てきたら危ないじゃないですか(笑)。いろいろなものを疑うようにはしていて、そこからアイディアを積んでいます。
今までの活動の中で「自由に羽ばたけた瞬間」 はありましたか?
「想像力を解き放つ」という意味では、特撮ものが一番フィットしている現場だと思います。この間まで仮面ライダーが放送されていましたが、変身するなんてまさに現実では起こり得ないことじゃないですか。皆さんが見始めた頃にもう終盤を撮っていたので、愛されてないと成立しない部分があったりして、ここが面白いよねときっと思ってくれるだろうという可能性を信じながら進むという意味では、期待と緊張みたいなものを常に持ちながら撮影していました。デビュー当時にも僕はスーパー戦隊に出ていたので、そこで得た知識と経験を今回はより高いレベルで応用できたらいいなと思いながら1年間やっていたので、それが子どもたちに伝わって、応援してくれるファンの方が喜んでくれたらすごく嬉しいです。特撮に関しては、子どもたちの生育にひとつでもプラスの影響があったらいいなと思いますし、子どもたちの想像力に携われたらなと思ってやっていました。
そんな想像の翼を広げて“まだ誰も見たことのない世界”を描くとしたらどんな世界にしますか?
“自分が将来こういうところに存在していたい”という想像はするようにはしていて、僕は「まだ見たことのない景色を見れそうだな」と思っているので、今この仕事を続けています。最初は受動的で何も知らなかったですが、今は昔に比べていろいろな部分が徐々に見えてきたので、またFashion Weekには挑戦したいですし、アンバサダーとしてショーに行って 「ショーに来ました」と言った次のカットで、ショーモデルとして出てくるのが一番説得力があるじゃないですか。それが運良くできるボディフレームなので、やってみたいです。あとは、もともと「留学したい、海外で働きたい」と思い、英語の勉強をしていたので、自分の活躍の場が広がって、いろいろな可能性が増えたらいいなと思います。
役から自分自身に影響を受けることはありますか?
受けないです。僕はカットがかかると、スンっと自分に戻るので、そのスイッチがあると思います。でも、すぐにオンとオフが切り替わるというより、0から100に向かって徐々に数値が上がるような形です。雑誌や映像作品では皆さんに「素敵に映ってるね」と言っていただくことが多いのですが、地元に帰って、友達や親と写真を撮ると、オフの僕は同一人物 かわからないくらいすごく腑抜けた顔をしています(笑)。
演じている役からヒントを得て、自分に取り込 みたいと思った経験はありますか?
姿勢をよくすることです。僕も人に優しくありたいと思って生きていますが、「この役にとってこれが特別ではなく普通なんだ」ということを僕は役としてやっているので、これができたらすごくスマートな男性になれる、紳士的な色気を醸し出せるような人になれると思ったものを取り込んでいきたいと思っています。僕は30歳に向かっていく段階ですし、かわいい系統の男の子とも差ができると思うので、単純に差別化が図れると思い、そういった魅力は身につけたいです。
俳優を志したきっかけはありましたか?
スカウトを経てこの世界に入って、「まだ見たことない景色を見れるかも」と思い、今も続けています。「自分に可能性がもう少しあるか」というのを常に考えていて、うまくいかない時期ももちろんあるので、後悔した時期もありますが、「この世界はもう少し別の景色があるかも」という気持ちが原動力になっています。職種に関わらず、そういったものがあると続ける理由やモチベーションにもなりますし、 逆にそこが詰まったらまた別の世界に飛び込むタイミングかもしれないです。
うまくいかずに立ち止まった時にそれでも続けられるのはなぜでしょうか?
僕も正直、就職した方が良かったかなと思ったこともありましたが、証明していないことが悔しかったんです。今は多様化しているので、様々な媒体があって、インフルエンサーや著名人、役者やアイドル、アーティストなど、「有名ってなんですか?」という質問が難しくなってきたと思います。昔は「テレビで見る人」と言えばよかったですが、今はめちゃくちゃ人気あるけど、見たことない人もいたりして、ある程度のラインに乗らないと、少し芸能かじったやつで終わってしまうと思いました。未だにカメラの前に立つのは恥ずかしいですが、次の仕事をもらうためには、スポットライトを常に浴びないといけないですし、それは僕がしたいかどうかは別として、この仕事を続ける、みんなに知ってもらう上で、一番光量が強いところにいなきゃいけないと思っています。
何に対してもストイックなんですね。
そうですね。今はネガティブエフェクトだけで進んでいますが、どこかの瞬間でそれが変わるかもしれないですよね。ネガティブなことだけでは推進力として弱かったり、十分ではないことが出てくると思うので、例えば、僕は独り身ですが、結婚したり、子どもが生まれるなど、背負うものが生まれたり、このためにやる方向に変わっていけば、また別の景色が見えそうでいいなと思います。
今後挑戦したいことはありますか?
いろいろありますが、海外で仕事がしたいです。役者で言えばハリウッドや、僕はフランス映画も好きなので、フランス映画に出たり、モデルでいえば、もう1回ファッションウィークに行ってみたり、海外での広告にもきっかけがあれば出たりと、いろいろな方法があると思いますが、とりあえず海外で仕事をしたいです。
役として、今後挑戦してみたい役柄はありますか?
今はまだオーディションを受けて、役をいただける機会を手に入れる段階なので、そういった要求はもう少し先かなと思います。自分でオファーをいただけたり、いろいろな人に庄司くんを使おうかなと言っていただけるようになってから考えられるようになりたいです。
俳優としてではなく、一人の人間として「こうありたい」と思う姿はありますか?
芯を持ちつつ、柔軟でありたいです。僕は良くも悪くも頑固なので、部分的に柔軟になったり、いろいろなものを受け入れる器は必要だと思います。でも、特にこの仕事は競争が多い世界で、僕はその合間を縫って上に行きたいと思うので、自分の芯は持ちつつ、柔軟性に富んだ人間になりたいです。
2025年10月28日 26歳の誕生日に2冊目の写真集を発売
PROFILE
俳優 庄司浩平
1999年10月28日生まれ。東京都出身。オスカープロモーション所属。2020年6月より、特撮ドラマ『魔進戦隊キラメイジャー』で、追加戦士のクリスタリア宝路 / キラメイシルバー役でテレビドラマ 初出演。2022年1月、パリコレクション<Yohji Yamamoto POUR HOMME22-23AW COLLECTION>に出演するなどモデルとしても活躍の幅を広げている。2024年11月より、特撮ドラマ『仮面ライダーガヴ』でグラニュート・ラーゲ9 / 仮面ライダーヴラム役で出演、東映特撮作品で2度目の変身ヒーローを演じる。今年7月、ドラマ24『40までにしたい10のこと』で一躍話題に。昨年よりNHK俳句にも出演中。
Model:KOHEI SHOJI(OSCAR PROMOTION) Photography:SHIGERU MASUI(AOI Pro. GLOBAL) Styling:RYOTA KOUJIRO Hair&Makeup:TATSUYA SUZUKI Edit&Text:YUHA KUSUNOKI
