EVERLASTING VIRTUE MASAMI NAGASAWA

FASHION

変化し続ける良さと同時に存在するのが、変わらない良さでもある。そこに自ずと美徳が宿り、新しいものが紡がれていく。そんな本質的な美しさと真新しさを併存させたノスタルジックなストーリーを、日本を代表する女優・長澤まさみさんとともに写し出す。

dress¥1,094,500 pants¥638,000 both by LOUIS VUITTON/LOUIS VUITTON CLIENT SERVICES

今回の撮影はいかがでしたか?

すごく楽しかったです。今回の撮影のコンセプトとしていた90年代の雰囲気は、個人的にもすごく憧れがあって、その空気感を纏いながらの撮影でしたし、フィルムだとまたデジタルとは異なるムードがあるので、ならではの味が出ているのではないかなと思うと仕上がりも楽しみです。フォトグラファーの荒井さんとは過去に何度かご一緒しているので、全信頼を置いて撮影ができました。

息ぴったりでしたよね。印象に残っている衣装はございますか?

全体的に非日常感がありながら、例えばALAÏAはモダンファッションという感じで、家に帰ってきて服を脱いだ時のような、少しヌーディな感覚を想起させるといった日常のシーンが垣間見えて。着心地もとてもソフトで、その軽やかさがエレガントでした。PRADAのルックは、ファッション雑誌からそのまま出てきたような、レトロポップな雰囲気があるデザインですご く可愛らしいですよね。総柄で華やかなMARNIのワンピースもお気に入りです。撮影前からラックにかかっている衣装を拝見していたのですが、実際に着てみたほうがボディラインがより綺麗に出るなと。上半身は今の時代にあったコンフォタブルなデザインでありつつ、下半身にはボディコンシャスな部分もあって、女性らしさを見せることができる、そのバランスが魅力的でした。LOUIS VUITTONもトップスの形が美しくて、まるで建造物を見ているような美術的なフォルムでしたし、DOLCE&GABBANAも変わらない良さのようなブランドらしさがあって、本当にどの衣装も全部素敵でした。

普段はどういったファッションがお好きですか?

着心地がいい楽な服装が好きです。性格的にガシガシと歩いてしまうタイプなので、パンツスタイルが多くて、最近はモノトーンに回帰中でシンプルなアイテムが増えました。ただ気分的な部分もあって、本当は色物も好きで。今回衣装で着たNIKEのスタイリングのように、柄がたくさん入ったトップスや色の入ったスポーティなテイストも、普段着る機会は少ないですが大好きなんです。

この夏に注目しているファッションアイテムがあればお伺いしたいです。

綺麗めのワンピースを着られたらなと思い探しています。季節としても夏が本当に大好きで、タンクトップとデニムのシンプルな合わせが一番のお気に入り。ユニフォームのように着られるお洋服はいいなと感じています。

GIANNAでは、強さとしなやかさを持ち合わせたグラマラスな女性像を掲げているのですが、長澤さんが描く理想的な女性像があれば教えてください。

私が描くのは、ちょっぴり少年っぽさを持ち合わせた女性。私自身、子どもっぽいところがあるというのも理由ではあるのですが、無邪気に物事に向き合いたいという想いがあります。大人気なく聞こえるかもしれませんが、物事を純粋に真っ直ぐ見る、それを忘れないようにしたいなと思っていて。女性らしく大人になっていくことも大切にはしたいけれど、いつもどこかにいたずら心を携えながら楽しんでいきたいなと。そういう少年っぽさみたいなものは今後も大事 にしていきたいです。

その“少年っぽさ”を楽しむためのヒントはありますか?

最近はやりたいことをきちんと具体的に、現実的に予定するようにしています。小さいことでも全然良くて、やりたいなと思ったり、興味を持ったりしたことに対して、後回しにするのではなく一つひとつクリアしていく。もちろん実現できるタイミングが来たら、にはなるのですが、趣味やプライベートの時間も少しずつ、本当に少しずつですが大事にできるようになってきました。

プライベート時間はどういう風に過ごされることが多いですか?

料理が好きなのでこの頃は魚料理にハマっています。とは言っても、魚を丸焼きすること。丸々1匹を買ってきて、しっとりみずみずしく仕上がるように工夫して焼いて楽しんでいます。もっと極められるように楽しみたいです。あと、時間を作って旅行にもどんどん行きたいなと。海外も好きで、今までもちょこちょこ時間を見つけては行っていて。撮影でもいろいろな国に行き楽しい時間を過ごさせていただいていますが、やっぱりヨーロッパはいいなと感じます。 昨年末にも、舞台のお仕事でロンドンに行く機会があり、その前にはファッションシューティングでパリにも行ったのですが、年齢を重ねるごとにヨーロッパの良さに改めて気付かされるんです。国によって違う表情がありながら、大陸で繋がっているからこそ築かれてきた歴史も見えてきたり、そういった文化を学ぶことですごく充実する感覚を得られるので、もっとたくさん訪れたいです。その一方で、日本の歴史の深さにも気付かされていて、京都なども今年は何回か訪れたいなと思っています。

お仕事についてお聞かせください。長澤さんが、2000年第5回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリを受賞されたのが今から約25年前となりますが、お仕事を始めたばかりの当時の心境はいかがでしたか? 芸能界には元々興味はございましたか?

もうそんなに経つのですね。多分、幼い頃から人が演じている姿を見るのが好きで、ドラマもよく観ていました。ただ当時は、演じること=お仕事としては分かってはいなかったので、たまたまいろんな偶然が重なって、この仕事に就くことができたんだなと。初めからすべてを理解できていたわけではないけれど、お芝居、演じることが少しずつ自分にとって大切なものになっていったし、自分自身が仕事として自覚するようになっていった時に、やりがいを感じて向き 合えるものになっていました。

ライフチェンジとなった転機はございますか?

それはいつもですね。本当にありがたいことに、すごくいい作品にたくさん出会ってきたので、そこから学ぶこともいっぱいあったし、周りの事務所の方々にもいろんな影響をもらって。徐々にですが、好きなことや興味があること、どんなことに自分が頑張りたいのかということを、きちんと自分の心の声を聞きながら考えられているし、常々新しい作品と向き合う周期にもそう感じることができています。

それは自然に感じられているのか、ご自身で考える時間を意図的に作っていたのでしょうか?

両方ありました。それも一歩一歩ですが、考えなくてはいけなかったし、考えるようになっていけたのかなと。

お仕事をする上で軸に置いていることを教えてください。

今できることをどう捉えるか、ということかなと思います。先々の不安を含め、いろいろなことを考え始めると目の前のことに手がつかなくなってしまう。それは自分の経験上分かっていることなので、今目の前にあることに向き合っていくことで広がるものを大切にしながら、日々お仕事をしています。

演技や撮影などのクリエイティブの源となっていることはありますか?

本業である俳優としては、役柄の内面、人間の多面的な部分をもっともっと掘り下げていけるように、自分の感覚や知識を増やすことを怠らず、大切に続けていきたいと思っていて。こういったファッション シューティングなど、俳優として演じるのとはまた少し異なるベクトルにあるようなお仕事は、実は最近やっと楽しめるようになってきた感覚があります。ファッションは自分自身の気分やムードも盛り上げてくれて、整えてくれて、刺激もしてくれる。そういう意味ですごく楽しい分野。昔は一生懸命に頑張り過ぎていたところがあったけれど、近頃はもっと大きく楽しみながら向き合えるようになってきていて、それは周りの方々に恵まれているということもあるのですごく感謝しています。

ご自身らしさを表現できているのかもしれませんね。

そうですね。俳優にとってパーソナリティのようなものが必要かどうか、正解はまだ分かり得ないのですが、洋服は一番身近な自己表現なので、そこには自分自身が投影されていて、自分の今の気分や趣味など、自分らしさや気持ちが少しは反映されていてもいいのかなと。役柄とは全然違う、そういう部分を大切にできたらいいなと思って臨んでいます。

新作映画『ドールハウス』が6月13日(金)に公開とのことで、“長澤さんが脚本の面白さに出演を熱望した”というキャッチフレーズを拝見したのですが、どういった点に撮影前から魅力を感じられていたのでしょうか?

先が読めない展開で、どんどん吸い込まれていくような感覚が、台本を読んでいても体感的にすごく面白くて。どうなるんだろうというワクワク感とドキドキ感が楽しくて、「この作品、すごく面白そう!」と思ったのがきっかけでした。矢口(史靖)監督の作品なので、コメディ要素もあるのかなと思うかもしれませんが、ちょっとびっくりしたり、ドッキリしたりという内容になっています。こういった作品のジャンルは、国によっても楽しみ方が若干違うかもしれないですね。

第45回ポルト国際映画祭で「Best Film Award」を受賞、また香港やイタリアの映画祭等でも高い評価を得ていますよね。世界各国での反応にどう感じられていらっしゃいますか?

すごく嬉しいです。ジャパニーズホラーとはまた違い “ゾクゾク映画”、“ドールミステリー”と表現されていますが、湿り気を感じる作品ではなく、ジェットコースターのようなアトラクション感があるような映画なので、世界中で楽しんで観てもらえる作品ではないかなと思います。

主人公・鈴木佳恵役を演じている際はどうでしたか?

普段演じる時と変わらないですが、「今までにしたことのない顔をしてください」というような指示をいただいた時もあり、なかなか面白い体験になりました。

『ドールハウス』の見どころを教えてください。

家族を巻き込みながら、止めどなく次から次へといろいろな出来事が起こっていくんです。その得体の知れないゾクゾクした環境に、みなさんもどんどん引き込まれるのではないかなと思います。恐怖ではなく驚き体験という感じなので、気負いせずに家族、友達同士でも楽しめる映画になっています!

美しさが溢れてやまない長澤さんですが、身も心もヘルシーでいるために、日頃から意識していることはございますか? 美容面で気をつけていることなども教えてください。

今は舞台で動いていることが多く、全身運動はやっぱりいいんだなと感じています。トレーニングなども大切だと思うのですが、全身が動かされる何かに取り組むというのは、心身ともにすごく健康になるのを実感できますし、血流も良くなるんですよね。なので、休みの時もダンスなどはやってみたいなと思っています。ウォーキングも身体にいいですし、気持ちも上がり日々のモチベーションになるので、大人になってからお散歩も大好きになりました。海外に行ってもよく街歩きをしています。家の周辺でも、意外と住んでいる地域はたくさん歩いたことがなかったりすると思うんです。いつもだったら1駅電車に乗っていたところを歩いてみたり、カメラを持って歩きながら過ごすのも好きです。

お写真もよくご自身で撮影されるのですか?

するのですが、あまり得意ではなくてずっと練習中です。でも、自分の目線というか、撮った写真を見返した時に、自分は何を目にしていたのかなど、カメラを通して見えてくるものもあり、違う発見がまたあります。自分の人生を楽しみたいですし、そうして感性を育てることは一つ大切なことだなと思いながら、カメラ散歩をしています。

心が沈んだり落ち込んだりした時は、どうマインドセットしていらっしゃいますか?

美味しいものを食べる! シンプルな調味料でシンプルに食べることです。美味しい塩と美味しいオイル、そして美味しい醤油。調味料も好きなものにこだわっています。小さいサイズでいろいろとトライしてみて、好みを探しながら選ぶのも楽しいです。

お料理はどういったジャンルを作ることが多いですか?

和食が好きなのですが、中華も作ることが多いです。中華といっても日本の食卓にあった馴染みのあるテイストで作っていて、味付けは意外とシンプルかもしれません。サラダも好きなので、野菜は必ず食べています。

自然と身体にいいものを摂られているのですね。

そうですね。健康食と呼ばれるものが昔から大好きで。でも、甘いものももちろん食べますし、それは別物として楽しんでいます!

どんな時に一番の幸せを感じますか?

のんびりしている時ですかね。仕事が終わって帰宅し、今日も頑張ったなとゆっくりしている時が一番幸せです。力を注いだ後の高揚感というか、達成感があって。それを楽しみに毎日一生懸命頑張っているんだと思います。

ご自身にとってのご褒美はありますか?

ご褒美はやっぱりお買い物です。ファッションだったり調味料やいい食材を買ったり。最近はお洋服も路面店などにきちんと出向いて買うようにしています。以前はネットで買うこともあったのですが、ほとんど機会が減りました。やっぱり見ることは大事だなと。素材が出す奥行きというものは必ずあるんですよね。お芝居然り、物事何でもそうですけど、その物自体の存在が歪みだったりムード感を生み出したり、空気感を作るので、それを実際に目で見ることが大切だと思うんです。そのものが持つオーラみたいなものを、自分が感じ取ること。ただそこに置いてあるだけでも醸し出す空気感は全然違うので。デザインされているものはそれぞれ意味や意図があって存在しているので、そういう観点に目を向けるのが私は好きです。

これだけは譲れないというマイルールはありますか?

誰に対しても、一緒にいて楽しいと思ってもらえるようにいることです。それは自分の機嫌がいいことも大事なので、自分の機嫌はきちんと自分で取るようにしています。

今号のGIANNAでは「“NEW FIELD”=次なる新境地へ」をコアテーマとして掲げているのですが、新たに挑戦してみたいことはありますか?

まだ明確にはお伝えできないのですが、心に秘めているものはあって。今はまだ、自分の考えの中で整理しなくてはいけないなという段階です。

30代で叶えたいことや今後の展望について教えてください。

30代で叶えたいことはありますが、楽しく穏やかに日々を過ごしていたいです。ただ、自分の人生において、まだやってみてもいないことがたくさんあるので、人生をもっとエンジョイしたい気持ちはあります。お芝居は変わらず今まで通りきちんとやっていきたい、その情熱はありますが、もう少し自由を取り入れながら自分の生活を充実させる。趣味もそうですし、勉強する時間だったり、家族と一緒に過ごす時間、まだやれていないことに取り組む時間などを大切にできたらいいなと思っています。

PROFILE

女優 長澤 まさみ Masami Nagasawa

1987年6月3日生まれ。静岡県出身。東宝芸能所属。2000年の第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞、同年に映画作品で俳優デビューを果たす。2004年に映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞を受賞し、以降も様々な表彰を受けている。近年の主な出演作に『コンフィデンスマンJP』シリーズ、『キングダム』シリーズ、『MOTHER マザー』『ロストケア』『スオミの話をしよう』など。主演映画『ドールハウス』が6月13日(金)より、映画『おーい、応為』が10月17日(金)公開。

Model:MASAMI NAGASAWA(TOHO ENTERTAINMENT) Photography:SHUNYA ARAI(YARD) Styling:MAHO NONAMI(TOHO ENTERTAINMENT) Hair:YUSUKE MORIOKA(eight peace) Makeup:SUZUKI Edit&Text:SEIRA MAEHARA