
——3年後はどのような俳優になっていると思いますか?
よく人生設計で、「5年後、10年後どうなっていたいですか」という質問はいただくのですが、基本的に僕はそれを決めないようにしています。例えば、「アカデミー賞を獲りたい」や、「主演でこういう映画をこういう監督とやりたいです」など、やりたいことや目標にしていることはもちろんたくさんありますが、“これ”というのを決めてしまうと、それが達成できた時にそこで終わってしまうのではないかと思うんです。それを目標にするより、自分は目の前にある壁に対して全力で向き合って、ぶつかってを繰り返して、一つ一つに向き合っています。芝居や役者に対しての考え方はここ数ヶ月でも常に変化し続けているので、3年後、人としても役者としても、大きく成長していたらいいなと思います。
——作品に入ってから作品が終わるまでで、こうなっていたいなという目標はありますか?
僕は作品に入ったら、その役や作品、現場や監督、一緒にお芝居する方々と向き合って、常に役として全力で生きていくことだけを考えています。その作品を見ていただいた結果、どう評価を得られるかは後からついてくるものだと思うので、僕は“ただ役として全力で生きる”というのを心がけています。
——3年後どのようなジャンルの俳優になっていると思いますか? また、どのようなジャンルの役に挑戦していると思いますか?
3年後は29歳、理想としては、今は大学生などの自分より下の年齢の役をやらせていただくことが多いので、何か1つ大人な感性を持っているような役どころに挑戦できていたらいいなと思います。正直自分の中で、今と3年前は、容姿や自分の中にあるものはもちろん成長していると思いますが、大きく変わっている感覚はなくて⋯⋯高校の時から僕は変わっていないんです(笑)。「自分は大人になれているのかな」と思う瞬間もあるぐらいですね。
——今まで自分と同じぐらいや少し上の職業を演じることもありましたか?
あります。例えば新入社員の役や、「すぱいす。」というドラマだと、自分より少し上の役でしたので、少しずつ増えてきてはいますが、どうしたら役どころが変わってくるのかなとは考えたりもします。ただ、今はこんな僕を見てみたいと思ってくれる方がいれば、そこに向き合っていきたいなと思うので、背伸びせず、等身大でしっかり向き合えたらいいなと思っています。
——想像がつかないような役をいただいた時はその役について何か勉強されたりもしますか?
社会人の役であれば、自分の周りにもいるので、友人や知り合いから話を聞いたりしたりと、そこに対してはハードルはそんなに高くないですが、ドラマ「波うららかに、めおと日和」では、海軍の役で、昭和11年のお話だと、今の自分と時代も違いますし、周りにも海軍の方はいないので、そういった役は、当時の軍艦が展示されている場所などで、当時の軍服を間近で見たり、そもそも海軍はどういった職業で、軍艦に乗っているのか。海軍とはそもそも何をしているのかが僕はわからなかったので、知らないことはとことん勉強して向き合いました。
——3年後、俳優としてどのような成長をしていると思いますか?
成長していたらいいなと思っています。この仕事はなかなか経験できないことも多いのでとても楽しくて、常に前に前進して、学んで、いろいろな発見と気づきを現場ごとに感じさせていただいているので、これからの3年もたくさんそういった瞬間に出会えるよう向き合っていきたいです。
——そんな本田さんは役者の楽しさや喜びはどこから感じるのでしょうか?
役としての感情が湧き出てくる瞬間は本当に不思議な感覚で、僕は本来「本田響矢」として生きているはずなのに、その現場の中では1つの役として生きていて、そこで自然と湧き出てくる感情が結構本当だったりするので、不思議な気持ちになります。そういった瞬間をひっくるめて、この仕事が楽しいと思いますし、友人や親戚、家族から「すごくよかったよ。楽しかったよ。」と言ってもらえたり、作品を見ていただいた方の心のどこかに残り続けてくれるような作品を届けられたら、この仕事のやりがいをすごく感じますね。自分も実際にドラマや映画を見て、この時はこうやって過ごしていたな、主題歌を聞いて当時のことを思い出したりと、その作品を見て感じたこともたくさんあったので、そういった感情や思いが乗せられる、心のどこかに生かせるような作品を届けられる役者になりたいと思います。
——演じているシチュエーションによって楽しさを感じる瞬間もあるのは面白いですね!
予想だにしていなかった感情が湧き出てくる瞬間があって、本を読んで段取りをして、リハーサルをした時はこうだなと思っていたものが、実際に本番を撮っている時に想像していなかった感情が湧き出てくるとすごく不思議で、あくまでその役としての感情なんだなというのが面白いです。
——3年後の自分自身はどうなっていると思いますか。
先ほども言いましたが、僕は本当に高校生から変わらないんですよね。友人関係も変わらないですし、住んでいる場所と着ている服が変わっているくらいだと思います(笑)。大人になりたいと思う瞬間はあるので、もっと感受性豊かに、“こういう気持ちや考えがあるんだ”という自分の引き出しを増やせたらいいなと思います。それは、仕事にも通ずるところはあると思うので、もっと知らない世界に飛び込んで、知らない国にも行ってみて、こういった人がいて、こういう町があって、こういう暮らしをしている人たちがいるんだということを知るだけでも今後の仕事に繋がりますし、もっと知らないことをたくさん知っていけたらいいなと思います。
——最近、ここの街に行ってよかったと思った場所はありますか?
今年の頭に仕事で上海に行ったのですが、こんなにたくさん人がいるんだと思いました。上海タワーにエレベーターで100階まで上がったんです。上からの景色はこんな感じなんだ。こんな素敵な場所で食事をしている人がいて、こういう建物を作れる人がいて、遊びに来ている観光客の方がこんなにたくさんいて。“自分は本当にちっぽけな存在だな”と思います。俯瞰的に宇宙のことを知ると、なんて小さいんだと思ったりしますもんね。もっと人として大きくありたいなと思います。
——3年後俳優以外でやってみたいことはありますか?
何も決まっていませんが、物作りに携われていたらいいなと思います。自分は服や香りが好きなので、それに関するものなのか、アクセサリーなどの小物やバックも好きなので、そこに特化するものなのかはわかりませんが、自分の趣味としてあるものをちゃんと具現化して、それを共有できる場ができたらいいなと思っています。
——香りというのはいわゆる香水の香りでしょうか?
香水やハンドクリームもそうですし、匂いフェチなので、僕の好きな香りが好きと言ってくれる方がいたら、共有できたら嬉しいですね。僕は自然の香りが好きなので、オーガニックというか、あまり香水とわからないような、ふわっと香る匂いが好きです。
——撮影に関しても伺わせてください。今回の撮影はいかがでしたでしょうか?
すごく楽しかったです。こんなにたくさんのパターンの撮影を行ったのはひさしぶりで、今までもそんなに経験がなく、自分もファッションがすごく好きなので、1つ1つ違った服や髪型、アクセサリーを身に纏って、それを仕事として参加できたことはすごくありがたいです。皆さんにまた違った部分をお見せできるのでなはないかなと思います!
——今号の全体テーマが「UNBOUND/形にとらわれない」なのですが、最も自由だと感じる瞬間や場所はありますか?
本当に服が好きで、休みの日は服屋さんや古着屋さんに行って、古着屋の店員さんと話している時間が多いです。服を見て、これは何年の何だみたいな話をするのが楽しいんです。僕は単純に何気ないスタイルが好きで、抜け感のある人が自然と服もかっこよく見えるのかなと思うので、いわゆる服が好き! とひと目で伝わるような個性的なファッションではありませんが、家に服はめちゃくちゃあります。
——古着が一番好きですか?
新品のものも古着も両方好きです。1番最初はスケボーをやっていた時期があったので、スケートブランドが好きでかなり買って、そこから古着にもハマって、ドメスティックブランドにもハマっていって⋯⋯今は古着も新品も両方着ています。古着の良さは古着じゃないと出せないというか、その時代に作られていたデザインを今リバイバルして作るものももちろんかわいいですが、あえて元となる当時のものを着るのがかっこいいなと思うものもあったりするので、その時代にしか作られていない服を着るのも好きです。
——これまでの人生やキャリアの中で、型を破ったような経験はありますか?
この仕事がそうなのかなと思います。本を読んで、「このシーンはこういう感じだな」という想像を超えてきたいと思いますし、皆さんが想像している型から外れに行くことも1つの面白さだったりすると思うので、型にはまらず、一歩踏み出さなきゃと思う瞬間はたくさんあります。
——そうやって求められているもの以上のものを見せたいと意識できるようになったのは初めからですか? それともある程度仕事をこなし始めてからでしょうか?
それは本当に月日が経つごとに、作品を重ねてですね。型にハマらないようにではないですが、やはり見てくださる方のことも考えます。一緒に演じている相手がどう感じるのかというのも、僕の芝居次第で相手の芝居も変わりますし、逆もそうで、そこは常に楽しみながらやっていきたいなと思っています。
——最後に、3年後の先、10年、20年後はどんな役者になっていたいですか?
自分が好きなこと、変わらず役者という仕事は続けていられていたらいいなと思います。年齢を重ねることによって難しくなるものもある中で、好きなことをその年になってもできていたら、50代、60代でできる役はまたガラッときっと変わってきますし、今は作品を見て、こういう先輩方の作品やお芝居を見て、すごく素敵だなと思うことがたくさんあるので、そう思っていただけるような役者になっていたいです。