GIANNA BOYFRIEND VOL.08 高橋文哉INTERVIEW

COLUMN

今号の雑誌テーマが「BEING/存在」でした。表現者として輝きを増す高橋さんですが、今の自分のあり方をどう捉えていますか?

変化しているとは感じています。前に「GIANNA」に出演させていただいた時は2年前ですが、当時と作品の雰囲気もすごく変わりましたし、深いお芝居をより求めていただくことが増えたと思います。今まではお芝居をすることは、その役になりきるということに近かったのですが、役者としてお芝居の転換時期が去年ぐらいにあって、そこからすごく“存在”を意識して生きています。

意識が変わったきっかけはありましたか?

映画「少年と犬」です。すごく難しい役で自分が今向き合っているお芝居のスタンスでは表現しきれないと思いました。そこからいろいろと模索してやっていた時に、“そこにただ息をさせること”が役においてできれば、お芝居としてのトーンが変わると思い、実践していく中で、そのあり方が心地よくなってきた気がします。

自分らしくいるために大切にしていることや、変わらない信念はありますか?

悩まないことです。悩まずに考えるというスタンスです。悩むという言葉にはネガティブなイメージを持っている人も多く、悩んでいる時にポジティブに切り替えることは難しいと思っているので、例えば、今日の失敗について悩まずに、「どうしてあの場所で自分はあのミスをしたのか」と考えることで、「ここが悪かったんだ。じゃあ次はこうやって対処すればいいんだ」と考えられるようになると思います。それはお仕事だけではなく、様々なことにおいて、そういう風に考えるようになってから向き合い方の自分なりの正解を見つけたと思います。

そんな今の自分を作ったターニングポイントはありましたか?

悩んでいる時間がすごくもったいないと思うので、悩む前に対処するスタンスになっていったんだと思います。

そんな今の自分自身を形成しているものの比率を教えて下さい。

99%仕事かもしれません。この間北村匠海さんとお話していて、「未だにこのお仕事でお金をもらっていることが不思議だ」とおっしゃっていて、それにすごく共感しました。自分の中で、“仕事は何割ですか”と聞かれると難しく、自分の中に染み付いているものです。

“高橋文哉といえば”何ですか?

襟足かなと今日メイクさんと話していて思いました。小学生の頃に母親に襟足を伸ばされていたのが嫌だった記憶があるのですが、作品で襟足のある役をやった時に、SNSで、美容室で僕と同じ髪型にしてくださいと言ってくださる方がすごく多いと聞いて、それがすごく嬉しかったです。

周りの方にはどんな人と言われることが多いですか?

負けず嫌い、せっかち、マイペース、根真面目と言われます。子供の頃から自分が何人もいる気がしていて、元気な自分と、シャイな自分、人見知りな自分と、人見知りなんて全くしない自分など、いろいろな顔を持っているのかなと思います。きっと兄に怒られないように、機嫌を損なわないように、と思っていたからだと思いますが、それが今活きているなと思います。

今自分にとって最も必要なものは何だと思いますか?

ないです。前までは時間と言っていましたが、欲しいものがなくなって、今はお芝居が欠かせないものです。「自分はどんな人間なんだろう」と毎日思っている時があって、ありがたいことに、去年ぐらいまでは、自分が役を演じていない時期がなかったので、ぽんっと1ヶ月空いたりしたらどうなるんだろうと思います。

休みの日はどうやって過ごすことが多いですか?

自分のために使うようにしています。最近は家族や友達と会ったり、外に出てみたりして。買い物もあまりしないのですが、今日はショッピングに行ってみようなど、自分のために時間を使うようにしています。

自身の原動力となる存在はありますか?

自分以外の人全員です。もちろん応援してくれている皆さまと言いたいところですが、もっと多くの人に届けたいと思っていて、お芝居を見てもらうことで、誰かに届く可能性があるからこそ頑張れます。イベントなどの僕を応援してくださる方々のためだけに向けた時はそのことを一番に考えますが、作品が決まった時に1番最初に皆さんに報告した時にどう思ってもらえるのかな、この役が放送された時にどういう風に受け取ってもらえるかなと考えています。僕のことを知らなくても、もしかしたら映画館に行ってくれる人もいるかもしれないと思いながら、その中心にいるのが、名前を知ってくれている人たちで、その中心にいるのが応援してくれている人たちだと思います。

今までで、自身に影響を与えてくれた存在はいらっしゃいますか?

直近でファンミーティングをやったので、こうして時間とお金を割いて、何時間もかけてきてくださったり、この方たちの笑顔を見られることが幸せだなととても感じました。

昔のインタビューを見ていてお兄さんの存在と答えていたのを見かけましたが、自身にとって超えられない存在や、超えたい存在はいらっしゃいますか?

兄とは、最近すごく仲良くなりすぎてそういう感じがなくなってきたというか、あまり会わないと特別感がありますが、言いたいことを言って、やりたいことを一緒にやって、食べたいものを一緒に食べて、最近はよく会っているので、親友のような感覚です。昔は目標を立てるタイプでしたが、今は立てずに、唯一持っているのは、“去年の自分を今年の自分が超えられますように”ということです。この仕事は評価も目に見えにくく、そんなことをすごく考えてしまう時期がありましたが、そこから去年頑張っていた自分よりも頑張りたいと思うようになりました。

撮影に関してですが、今回のファッションシューティングはいかがでした?

楽しいです! こういうお仕事は定期的にやらせていただいていますが、お芝居とはまた違った栄養があるなと思います。でも、お芝居に通ずる部分もあると思っていて、衣装から得た情報だけで、自分の中で役を構築して表情を作るのが好きなので、すごく楽しいです。

静寂の空間で紡がれるストーリーでのファッションシューティングでした。「静かなる力」は繊細ながらも強さも持つ高橋さんにぴったりなテーマかと思います。高橋さんの思う自身の強みを教えて下さい。

自分の強みは惜しまないことだと思います。何事においても自分が楽しいと思うことに全力で向き合っているので、良くも悪くも突き詰める力が高いのかなと。新しい趣味にハマった時は、家の中が趣味のもので溢れるので、いろいろなものを通った結果、家にたくさんものがある状態です(笑)。

ちなみに今までハマった趣味は何でしたか?

サバゲーやゴルフ、ボーリングやダーツにハマって、家にダーツの機械もあります。あとは食器や包丁、フライパンもあります。

料理もお得意ですよね!

最近の方が料理をしていて、今まで特技と言っていたので、最近やっと趣味になった感じがします。料理をしている時は料理のことしか考えないので、気が紛れたりもして、すごく疲れて帰ってきても、料理をすることがあります。最近はチキン南蛮が美味しくできました。そういう時間のかかる料理が好きです。

そんな繊細さは表現者としての強みでもあるかと思います。そういった表現をしていく上で大切にしていることはありますか?

日常からイメージすることを心がけていて、ゴチでもイメージイートを去年からずっとやっていて、食べないで味を予想して食事するという謎の特技を得ました。何かをする時もイメージを持って挑んでいて、今日も自分がこの服を着てカメラ前に立った時をイメージしていました。役者をしているからだと思いますが、家で本を読んでいて、お話をいただいた段階だと衣装も場所もわからなければ、ビジュアルもわからないこともあるので、そこから文面を見て勝手にイメージして、自分がその世界で生きていけるかを考えたりもしています。

今回、初の朝ドラ「あんぱん」への出演ということで、出演が決まった時の心境を教えて下さい。

心からありがたいと思いましたし、このお仕事を始めた時から憧れていた作品なので、そこにNHK100周年というタイミングで出演させていただいたからには、少しでもお力添えできるよう頑張りたいです。

高橋さんの演じる健太郎はどんな役になっていますか?

博多弁で結構とっつきやすく、空気の読めないところのある、少し猛進感のある人間ですが、愛される力の高い、人の懐に入るのがとっても上手な人です。博多弁のお芝居も最初は難しかったです。最初はだいぶ慣れましたが、その方言の中に感情を入れる作業が難しかったです。

北村さんとの親友役ですが、撮影中のエピソードがあれば教えて下さい。

最初の頃は、お互い絶妙な人見知りの感じでしたが、だんだんコミュニケーションをすごく取らせていただくようになって、料理の話をしたり、美味しいご飯屋さんの情報も共有したりしています。

今回の作品を通して視聴者の方にどんなことを伝えていきたいですか?

作品自体はすごく広いと思いますが、健太郎としては、どんな苦難や壁があっても、それを壁だと思わずに、どうやったらこの壁の向こう側にいけるんだろうと、どんな形でも向き合うことさえやめなければ、その先に進める力があると信じているのが健太郎なので、そこを見ていただけたらいいなと思います。あとは、平日の朝に健太郎からもらえる元気は僕自身も演じていて、テンションを底上げしてもらっている感じがするので、それをお届けできたらいいなと思います。

来年は25歳になり、20歳のターニングポイントだと思いますが、20代前半はどう過ごしていましたか?

目まぐるしかったです。まだ25歳まで1年ありますが、自信を持ってその当時の自分を思い出せる作品との出会いにすごく救われたと思います。

20代後半はどんな風に過ごしていきたいですか?

唯一言うとしたら年齢に縛られないことです。

最後に、今年はどんな1年にしたいですか?

今年はすごく挑戦をする1年だと思っていて、24歳になった時も、2025年になった時も、プライベート、仕事問わずに“今年のテーマは挑戦”とずっと言っています。ここから先、挑戦することが仕事でも増えますが、その挑戦していく姿みたいなものを皆さんに見届けてもらえるように向き合っていきたいと思っています。

PROFILE

俳優  高橋文哉

2019年「仮面ライダーゼロワン」で俳優デビュー。以降、ドラマ「最愛」「君の花になる」「フェルマーの料理」などに出演。2023年公開「交換ウソ日記」では第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2024年にはドラマ「伝説の頭 翔」、映画「君と世界が終わる日に」「からかい上手の高木さん」「ブルーピリオド」「あの人が消えた」に出演。2025年には「エランドール賞新人賞」を受賞、映画「少年と犬」も公開。NHK連続テレビ小説「あんぱん」(2025年度前期放送)に出演中。